緊急討論:サンゴ白化問題(概要)
1998年11月1日 15:10---16:00


C 11/1-15:10---15:15
1)サンゴの白化現象−沖縄の取り組み
山里 清((財)亜熱帯総合研究所)
概要:沖縄島では、これまでに幾度か白化現象が起こったが、今夏のそれは、最大の規模のものである。白化現象の解明には、白化が始まるまえから調査しなければならないが、急に対応することは難しく、時期を失しているが、当研究所では、10月はじめから沖縄島の緊急調査をはじめたところである。本格的調査もしなければならないが、そのためには、沖縄内の他の研究機関とも協力しながらやる必要が有る。そこで、去る10月7日に、県内や熊本、鹿児島の研究機関の方々にも集まっていただき、情報交換、今後の取り組みについて協議していただいた。そこで、今後、さしあたり、亜熱帯総合研究所が調査計画をつくり、公的機関に財政的支援を求めることにした。来年中までは、白化のために死亡したサンゴは同定できるだろうから、白化のサンゴ群集に及ぼす影響について調べるに支障はないと考えられたからである。こいう調査研究は、サンゴ礁学会が窓口になって計画するのが適当と思われるが、今回は、緊急対応的に、亜熱帯総合研究所が世話役を買って出た次第であるが、資金のめどがつけば、賛同が得られる研究機関や研究者の方々に呼びかけて幅広い組織を作って調査に当たることになる。現在、今年度に予備調査を、来年度に本調査を行うような計画を立てて、政府機関に資金を申請中である。

C 11/1-15:15---15:18
2)鹿児島県喜界島における造礁サンゴ類の白化現象
杉原 薫(東北大・院・理)
概要:10月上旬の喜界島周辺における造礁サンゴ群集を調査した結果、種あるいは属ごとで白化の進行状況が異なっていることがわかった。これらのデータをもとに、今回の琉球列島での大規模な白化現象がどのように進行していったか、また今後どのような群集遷移が予想されるかを考察する。

C11/1-15:18---15:20(概要のみ、G11/2-10:30と差替え)
3)1998年夏の高水温と沖縄本島本部半島周辺海域でのサンゴ礁の白化現象およびミドリイシ類を中心とした大量弊死の記録
中野義勝(琉球大学熱帯生物圏研究センター・瀬底実験所)
概要:表層水温の上昇が7月上旬に見られたが、礁原上のシナノウサンゴ・トゲサンゴなど一部の造礁サンゴに白化現象が現れたにとどまった。8月にさらに表層水温は上昇し、高水温域は鉛直方向に広がり続け、瀬底島・水納島周辺域では水深20mにまで30℃を記録するに至って、礁原上のほとんどの造礁サンゴで白化現象が確認され、礁斜面でも水深増加と共に減少するとはいえ、ハマサンゴを始めかなりの種の造礁サンゴに白化現象が見られるようになった。8月下旬の調査では、実験所前面の礁原ではトゲサンゴ・ホソエダアナサンゴモドキがほぼ死滅し、9月下旬にはほぼ全てのミドリイシ類が死亡した。また、部瀬名岬の礁原上に優占した卓状ミドリイシ類群落が全滅し、瀬底島他の多くの礁原上でも卓状ミドリイシ類が激減している。本部半島北部の新里の礁池内ではスギノキミドリイシを主とした枝状ミドリイシ群落を始め多くの造礁サンゴが死滅しつつある。

C11/1-15:20---15:23
4)阿嘉島周辺海域(沖縄県慶良間列島)におけるサンゴの白化について
*谷口洋基・岩尾研二(阿嘉島臨海研究所)
概要:本年の夏報告された広範囲かつ大規模な造礁サンゴの白化現象は、阿嘉島周辺でも7月末から観察されるようになり、8月末には、地形等によって差はあるものの、水深3メートル以浅の場所ではトゲサンゴやハナヤサイサンゴ、ミドリイシをはじめとするほとんどのサンゴで、水深25メートルの比較的深い場所においてもヤセミドリイシなどで白化が確認されている。今回、その状況と共に現在実施中の調査について報告する。

C11/1-15:23---15:26
5)久高島礁池および西表網取湾で見られた造礁サンゴ類の白化の概況
*西平守孝(東北大学・院理)、横地洋之(東海大学・海洋)、鈴木孝男(東北大学・院理)
概要:久高島と西表の網取湾でも白化が見られました。時間的ゆとりがあれば、ほんのわずかな時間で写真やビデオなどでご紹介します。

C11/1-15:26---15:29
6)石垣島における造礁サンゴの白化に伴う大規模斃死
藤岡義三(水産庁中央水産研究所)
概要:1998年9月、石垣島周辺の5地点において、10×10mの大コドラート法を用いて、造礁サンゴの白化に関する野外調査を実施した。今回の白化は1994年以来、4年ぶりの本格的なものであり、(1)近年最大級の規模、(2)白化の程度が強い、(3)白化に伴う斃死が顕著、といった特徴が認められた。95%以上のサンゴが白化し、これに伴う斃死が広範囲にわたって確認された。白化や斃死の割合は種や生息場所により著しく異なり、体積に対する表面積が大きいクシハダミドリイシやオトメミドリイシ等において高くなる傾向が認められた。一方、コユビミドリイシやエダコモンサンゴでは、白化はするものの斃死率は低かった。

C11/1-15:29---15:32
7)石垣島における造礁サンゴの広範な白化とその原因
*長谷川 均(国士舘大学)、目崎茂和(三重大学)、市川清士(国士舘大学)、星野 眞(WWFJapan)、小林 孝(WWFJapan 白保準備室)
概要:98年夏、琉球列島の各地で観察されたサンゴの白化は、原因を高い海水温とするものが多い。石垣島でも、7月以降各所で白化現象が顕在化した。しかし、前兆は既に梅雨期にあった。石垣島における今回の白化は、1:高い海水温の持続、2:例年の2倍近い降水に伴う梅雨期の赤土流出とその後の高い海水温の影響が複合したの2通りの原因が考えられる。 30年程前にも(1967年か)、石垣島では広範なサンゴ白化がみられたという。67年は台風が少なく、7・8月に海水温が30度以上あった日数は24回であった。

C11/1-15:32---15:42(C11/1-15:30との振替)
8)石垣島白保と川平における白色化前後のサンゴ群集被度変化
*波利井佐紀 ・茅根 創・山野博哉(東京大・理・地理)、林原 毅・皆川 恵(西海区水産研)、井手陽一(海洋生態研)、秋元不二雄(芙蓉海洋開発)
概要:石垣島南東岸白保の5測線と北西岸川平の1測線において、白化前(白保では1998年5月、川平では1995年3月)と白化後(1998年9月)のサンゴ被度を調査した。その結果、枝状コモンサンゴ、枝状ミドリイシ、塊状ハマサンゴの白化は40〜80%と高く、白化していない生サンゴの被度は25%以下と白化前のおよそ半分に減少した。アオサンゴの白化率は0〜20%と相対的に小さい。

C11/1-15:42---15:50(C11/1-15:45との振替)
9)石垣島における白化前後の水温と生産量・CO2の変化
*茅根 創 ・工藤節子(東大・科学技術振興事業団)、野崎 健・加藤 健・根岸 明
(電総研)、斉藤紘史(計量研)、秦 浩司(海洋バイオ研)、田村正行(国立環境研)、
紀本英志(紀本電子)、秋元不二雄(芙蓉海洋開発)
概要:石垣島沿岸の3地点における実測水温データによれば、外洋と海水が交換する地点の 1998年夏の水温は1997年よりやや高いものの、過去数10年間を通じてとくに高いとはいえない。白保ではサンゴ礁生物群集の生産(光合成・呼吸・石灰化)とそれに伴うCO2変化の通年観測を、1998年9月に開始した。本報告では白化後の9月の生産、CO2変化を白化前の測定結果と比較する。

C11/1-15:50---15:52(概要のみ、ポスター発表あり)
10) 石垣島浦底湾における造礁サンゴの白化とそれに伴う魚類相の変化
渋野拓郎・*橋本和正・阿部寧・高田宜武(水産庁西海区水産研究所石垣支所)
概要:西海区水産研究所石垣支所では、石垣島浦底湾の礁縁部に調査定線を設置し、年2回の魚類相調査を行っている。方法は、長さ100mの定線に沿って泳ぎながら、その定線の両側それぞれ2mに見られた魚類を記録していくラインセンサス法である。本発表では、 1998年4月末〜5月初旬(白化前)と10月下旬(白化後)に行った調査の結果について報告する。

C11/1-15:52---16:00(総括、総合討論含む)
11)白化とサンゴ礁生態系機能
土屋 誠 (琉大・理)
概要:「白化とサンゴ礁生態系機能」というような観点からのもので、白化現象が将来のサンゴ礁生態系機能に及ぼす可能性について、生物群集の変化と生物多様性、人との関わり、景観の変化、などを主要なポイントとして議論する事を考えております。



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