A: オニヒトデは、これまでにインド洋や太平洋の各地でたびたび大発生し、サンゴ礁に大きな影響を与えてきました。オニヒトデの生態はまだまだ不明な点が多く残されていますが、これまでに分かっていることを概観してみましょう。
*「オニヒトデのはなし」(第2版、平成16年3月、沖縄県文化環境部自然保護課発行)を基に作成しました。
沖縄県文化環境部自然保護課のHPにてpdf形式で配布されています。
*(財)亜熱帯総合研究所のHPにも報告書が掲載されています。
1.分類と分布
オニヒトデは、ナマコやウニ、ウミシダと同じ棘皮動物の仲間です。オニヒトデは、インド洋・太平洋に広く分布していますが、カリブ海には分布していません。また、高緯度域には分布していません。
2.形態
オニヒトデの体色は、灰色、オレンジ色、紫がかった青色と様々ですが、棘の先は赤色をしているものが多いようです。体の大きさは成熟した個体ではふつう30cm前後ですが、大型のものでは直径60cm位になるといわれています。腕の数は10〜20本と様々で、平均15本前後といわれています。
体は柔軟性に富み、枝状サンゴの枝の間や卓状サンゴの裏側の狭い隙間にも入り込むことができます。背面は長さ2〜4cmのたくさんの棘で覆われています。この棘に大変危険な毒が含まれています。オニヒトデは移動能力が高く、餌のサンゴを求めて1日で70m近く移動することができます。

サンゴに群がって捕食するオニヒトデ (©長田智史さん)
3.生活史
沖縄島では6〜7月頃に雌雄のオニヒトデが放卵放精をします。1匹のオニヒトデは1年間に数千万個の卵を生みます。受精卵は発生して幼生になり、数週間はプランクトンとして海面近くを浮遊しています。その後サンゴ礁の上に降りてきて着底し、直径0.5mmくらいの稚ヒトデに変態し、冬に直径10mmくらいにまで成長します。
オニヒトデは、条件が良ければ生後2年目の夏には20cmほどに成長し、放卵放精を行うまで成熟するものもいます。オニヒトデの寿命は水槽での飼育実験から7〜8年と見積もられています。

オニヒトデの一生(資料提供: 東海大学横地助教授)
オニヒトデが主にサンゴを餌としていることは広く知られています。しかし、卵から孵化した直後のプランクトンの頃に珪藻や渦鞭毛藻などの植物プランクトンを食べていることや、その後の着底した頃の稚ヒトデが石灰藻の仲間であるサンゴモ類を食べていることはあまり知られていないことかもしれません。
オニヒトデは、サンゴを食べる際、組織をついばんだりかじり取ったりするのではなく、自分の胃をからだの下側にある口から外に出して、直接消化吸収します。1匹のオニヒトデは1年間に5〜13uのサンゴを食べるといわれています。しかし、飢えにも強く半年以上何も食べなくても生きていられます。オニヒトデは、成長の速いミドリイシ類やコモンサンゴ類を好み、ハマサンゴ類やサンゴガニが共生するハナヤサイサンゴ類は好まないようです。ただし、飢餓状態になると、好みに関係なく全てのサンゴを食べてしまいます。
オニヒトデを捕食する生物として、ホラガイ、フリソデエビ、フグの仲間、モンガラカワハギ、ハタの仲間、オウギガニの仲間、ウミケムシの仲間、クラカオスズメなどが知られています。しかし、ホラガイやフリソデエビなどは、数が少ないうえにオニヒトデだけを好んで食べるのではなく、通常は他のヒトデ類を食べていると考えられ、強力な天敵というわけではなさそうです。ただし、プランクトン期や稚ヒトデ期のオニヒトデがどんな動物に食べられているのかは、まだ良く分かっていません。
4.沖縄県におけるオニヒトデの大発生
宮古島では1950年代後半に、八重山諸島でも1970年代に大発生が確認され、サンゴ礁が大きな影響を受けました。沖縄島では、1969年に恩納村でオニヒトデが大発生し、その後、他の地域に移動したといわれています。1980年代初頭までに、沖縄島ではオニヒトデの影響で健全なサンゴ礁が非常に少なくなったようです。その後、1990年代中頃までには、沖縄県の各島々においてオニヒトデの密度は正常に近い状況に戻ってきて、サンゴ礁も回復していったようです。
恩納村では、1983年以来現在まで、毎年オニヒトデ駆除を行っていましたが、1996年に再びオニヒトデが大発生し、過去最大の駆除数を記録しました。1990年代後半から2003年までに、沖縄島の北部、沖縄島周辺では慶良間諾島や粟国・渡名喜島、伊是名・伊平屋島など各地から大発生の報告がありました。2004年に入り宮古島、石垣・西表島周辺でも大発生の兆候が確認されています。
5.オニヒトデの棘が刺さったら
オニヒトデにはたくさんの棘が生えています。棘は非常に鋭利で、しかもとてももろく出来ているので、深く刺さると皮膚のなかで折れて簡単には取れなくなります。棘には毒があり、刺さると大変痛むうえに腫れたりします。痛みは棘が刺さると即座に生じ、非常に強烈で数時間持続します。ひどい症状になると刺されて1時間ほど後に嘔吐したり、数日間にわたり2〜3時間ごとに痛むこともあります。
体質によってはアレルギー反応を起こすこともあり、さらにひどい症状となることもあります。オニヒトデの棘に繰り返し刺されると、その後に期間が空いた場合でも、次に刺された時の反応がよりひどくなることもあります。
※オニヒトデに刺されたときの応急処置は以下のように行ってください。
(1) 簡単に取れそうな棘は取り除きます。傷の中に埋もれている棘は治療を受けるまでそのままにしておきます。棘の先端はとても折れやすく、傷の中では見つけ出すのも難しいので無理に引っ張り出そうとはしないでください。
(2) 傷を熱めの湯(約40〜45℃)に浸します。傷口をきれいにし、ゆるく包帯を巻きます。
(3) 医師の治療を受けます。