サンゴ礁イラスト
 

第16回大会2013

日本サンゴ礁学会 第16回大会報告

 今大会には約250名が参加され、口頭発表が40件、ポスター発表が101件(NPOポスター8件含む)あり、連日、議論が絶えませんでした。最終日には海外からの著名な研究者らによる国際シンポジウムと関連学会(日本ベントス学会・日本熱帯生態学会)から研究者を招いてのシンポジウムがあり、サンゴ礁研究の最先端に触れるとともに改めて研究の裾野の広がりを認識する機会となりました。また、今年も例年通り自由集会が3件開催され、夜遅くまで自由に討論が行なわれました。
 ポスター会場となった海が望めるレストランでは2日間にわたりポスター発表が行なわれました。発表会場を1つとし、ポスターの配置にゆとりを持たせ、議論がしやすいように工夫しました。今回も学部生や大学院学生による元気な発表が目立ち、今後の活躍が期待できそうです。今大会でもポスター賞(最優秀発表賞・優秀発表賞・審査員特別賞)を設定し、元気な3名の学生が受賞されました。
 今大会では非会員による招待講演を企画しました。優秀な若手研究者である京都大学の千徳明日香博士を招き、「サンゴの出芽による無性生殖と群体形成」について講演してもらいました。講演を聞かれた参加者にとって、大いに刺激になったことと思います。また、今回の企画は非会員のサンゴ礁研究者に学会の活動内容をPRできる良い機会になり、会員増へ向けての取り組みのひとつになったと思います。次回大会以降も継続して企画して頂きたいと願っております。
 大会の一大イベントである懇親会にも趣向を凝らしました。懇親会を盛り上げるために 大会初のBBQを企画しました。出来たての料理を楽しむことで、普段の懇親会よりも会話が弾んだのではないでしょうか。また、若手会のメンバーに懇親会企画「サンゴ de ビンゴ」があり、参加者全員が一体感を持って懇親会を楽しめたことと思います。このような若手会の企画は今後も継続して頂きたいと願います。
 沖縄で開催される大会ですので、沖縄県内へのPRに力をいれました。大会の告知を新聞などのメディアで紹介することや、大会中は琉球新報誌で「サンゴの不思議」と題して若手研究者による3回の特別連載を企画しました。今後、ますます学会と社会との繋がりが重要となってきますので、次回大会でも学会活動を社会へ積極的にPRしていくことが必要と思います。
 大会が終わり振り返ってみますと、最高のメンバーで大会運営が出来たと思っています。大会最終日の夜に、「また機会があればこのメンバーで大会運営をしよう!」と誓い、実行委員会は解散しました。現在は、各自が学会の発展とサンゴ礁研究の進展に尽力しています。今大会が無事終了しましたのは、事務局を引き受けて下さった照屋智美さんと安岡由貴さん、学生アルバイトの皆さん、沖縄科学技術大学院大学のスタッフの方々のご支援のおかげです。深く御礼を申し上げます。

実行委員長:新里 宙也
 実行委員:鈴木 豪・本郷 宙軌・井口 亮・中島 祐一・照屋 智美

スケジュール (終了しました!)

 日程:2013年12月12(木)〜15日(日)
 開催場所:〒904-0495 沖縄県国頭郡恩納村字谷茶1919-1 沖縄科学技術大学院大学(OIST)
 会場:「講堂」

第16回大会スケジュール

8月16日(金) 発表・事前参加登録開始

10月4日(金) 発表・事前参加登録締切

10月25日(金) 要旨締め切り(電子メールによる受付)

11月1日(金) 大会費事前払い振込み期限(これ以降は割引の効かない当日払いとなります。事前払いするには事前参加登録が必須です。)

*以下応募状況により変更する場合があります。

12月12日(木) 大会初日

 午前 各種委員会、評議委員会、大会受付開始
 午後 口頭発表
 夜 自由集会

12月13日(金) 大会2日目

 午前 口頭発表
 午後 ポスターセッション、口頭発表

12月14日(土) 大会3日目

 午前 口頭発表
 午後 ポスターセッション、口頭発表
 夕方 総会
 夜 懇親会

12月15日(日) 公開シンポジウム

プログラム

第16回大会の口頭・ポスター発表の暫定プログラムは、下記からダウンロードできます。

口頭発表  (2013年10月29日版)

ポスター発表  (2013年10月29日版)

第16回大会 公開シンポジウムなど

<International mini-symposium: “Genomics and the Future of Coral Biology”>【参加費無料】(終了しました!)

日時:2013年12月15日(日) 9:30-11:30
場所:OIST 講堂
主催:Marine Genomics Unit, OIST
オーガナイザー:新里 宙也
参加費:無料 申込み:不要

最終日15日に、Genomics and the future of coral biology(ゲノム科学とサンゴ生物学の未来)と題した国際ミニシンポジウムが開催されました。

DNAには生き物の設計図となる「遺伝情報」が記録されています。その遺伝情報に基づいて、生命活動が行われています。近年DNAを読み取る技術が飛躍的に向上し、生命科学研究に革命を起こしています。例えば、「次世代シークエンサー」と呼ばれる解析装置が登場しました。その技術革新の波が、サンゴ研究分野にも波及しつつあります。本シンポジウムでは世界各地から著名な研究者を招き、DNA解析の新技術を使った最先端のサンゴ生物学研究を紹介するとともに、ゲノム科学がサンゴ研究に今後どのような展開がもたらすのか展望することを目的として開催されました。

まず、OISTマリンゲノミックスユニットの新里 宙也と將口 栄一から、世界初となるサンゴと褐虫藻の全ゲノム(全ての遺伝情報)解読の成果について報告がありました。続いて台湾の中央研究院生物多様性研究センターの李 文雄センター長が、台湾と日本でよく見られるスギノキミドリイシの全ゲノム解読プロジェクトの状況を報告しました。さらに開発中のゲノム解析ソフトについても紹介がありました。オーストラリアのジェームズクック大ARCサンゴ礁研究センターゲノム科学分野リーダーのDavid Miller教授は、海洋酸性化がサンゴの骨格にどのような影響を与えるのか、そして病原体に対してサンゴはどのような反応をしているのかを遺伝子レベルで解析した成果について講演しました。最後に早稲田大学理工学術院の竹山 春子教授が、バクテリアなどの微生物とサンゴの関係、そして環境の変化がサンゴと共生する微生物に与える影響を、一細胞レベルで解析する新技術を紹介しました。会場から積極的に質問があり、予定時間をオーバーする盛り上がりでした。最後にOISTマリンゲノミックスユニットの佐藤 矩行教授からサンゴ礁学会の若手研究者と学生に向けて、サンゴ研究をどんどん盛り上げていってほしいと激励がありました。

最先端の科学技術によって、私達が想像すらしなかった新事実の発見が、近い将来期待されます。これからの研究の進展から目が離せません。なお、本シンポジウムは全て英語で行われ、OISTマリンゲノミクスユニットの共催で開催されました。開催にあたってキヤノン財団の支援を受けました。

オーガナイザー:新里 宙也

<熱帯・亜熱帯沿岸域生物の多様性へのアプローチと課題>【参加費無料】(終了しました!)

日時:2013年12月15日(日曜日)13:00〜17:00
場所:OIST 講堂
主催:日本サンゴ礁学会
オーガナイザー:鈴木 款 (静岡大学)・土屋 誠 (琉球大学)
参加費:無料 申込み:不要

サンゴ礁の生物多様性に関する研究や、その保全活動は、日本サンゴ礁学会の重要課題です。サンゴ礁は単独で成立しているわけではなく、周辺に存在するマングローブや海草群落等とリンクしてその生態系を維持していることは良く知られています。しかしながら、それらの相互関連性や、サンゴ礁の保全にとって、サンゴ礁周辺の生態系の動態を理解することの重要性等について十分に解明されていない状況です。今回、沿岸域生態系全体の理解をより深めるために、同じような課題に取り組んで活動している日本ベントス学会と日本熱帯生態学会と合同でシンポジウムを開催するという新たな取り組みを行いました。またこのシンポジウムを通じて、学術的な交流だけでなく、学会間の連携も推進できれば、今後のサンゴ礁や沿岸域生態系全体の保全活動や生物多様性の研究をはじめ、多くの研究の発展に関しても大きな力となると考えました。

当日は主催者による趣旨説明に続いて6題の講演がありました。日本サンゴ礁学会から、日高 道雄氏(琉球大学)が地球環境の変化における共生系の適応機構等について最先端の成果を報告され、灘岡 和夫氏(東京工業大学)が社会システムを含むシステムのシステム的理解がサンゴ礁生態系の問題を考える上で重要であると強調されました。日本ベントス学会から参加された堤 裕昭氏(熊本県立大学)は気温の上昇・降雨や台風のベントスへの影響を具体例を挙げ、生物群集が変化している現象を紹介され、同学会の仲岡 雅裕氏(北海道大学)は景観の変化と生物多様性との関係を明確にするためのより一層の有機的共同研究の必要性を力説されました。日本熱帯生態学会からは、田淵 隆一氏(森林総合研究所)によるマングローブの森を水界を含めた生態系としてとらえた、陸からの影響を含めた総合的な研究の重要性についての報告と、神崎 護氏(京都大学)によるインドネシアでの調査研究活動の成果を基礎とした熱帯林の科学的管理の事例報告がありました。

全体を通じて、サンゴ礁を含む沿岸域生態系の研究課題を共有することができました。また会場に集まった参加者とも活溌な意見交換が行われ、今後のサンゴ礁保全を進めていく上で貴重なシンポジウムでした。日本サンゴ礁学会が、今後より高いレベルでの問題意識を持ち、問題解決への場として大きく成長していくために周辺の学会との合同シンポジウムの開催や共同事業等を今後も継続的実施していく必要性を確認しました

オーガナイザー:鈴木 款 ・土屋 誠

第16回大会 <自由集会(提案募集型企画)>

自由集会 ① 2013年夏季の白化を統括する (終了しました!)

オーガナイザー: サンゴ礁保全委員会(中野義勝・琉球大学熱帯生物圏研究センター瀬底研究施設)

本自由集会は2013年夏季に各地で観察されたサンゴの白化現象について、その概要把握と今後我々のとるべき適応的行動について、総括しコメントを作成することを目的として、サンゴ礁保全委員会の全体会を兼ねた集会として開催されました。今年の白化現象は沖縄島を主として報告され、この様子はサンゴ礁保全委員会の呼びかけに快く応じていただいた「日本全国みんなでつくるサンゴマップ」実行委員会のご協力もあり幅広い地域で観察が行われました。この観察結果を交えた予測モデルの構築については同実行委員でもある国立環境研の熊谷直喜さんが大会で報告され、そのダイジェストを本集会でもご紹介いただきました。モニタリング事例としては大会で発表された(一財)沖縄美ら島財団の山本広美さんのご厚意によりダイジェストをご提供いただき、(一財)沖縄県環境科学センターの長田智史さんが、県内のモニタリング結果を交えてご紹介下さいました。これらに、私から瀬底島の状況の報告を加えて、およそ40名の出席者で学会員・行政・一般等それぞれの立場から、今年の概況の把握と今後取り得る対応について議論しました。モニタリングの充実の必要性、サンゴマップの利用のあり方とモデリングの活用の可能性、サンゴの環境耐性の向上を促す将来的な技術開発への可能性などについて活溌な意見交換がされました。これらの議論を受けて、サンゴ礁保全委員会では、総括コメントを作成し公表する予定です。

自由集会 ②分布境界のサンゴ礁生態学 (終了しました!)

オーガナイザー:井口亮(沖縄高専)・本郷宙軌(琉球大)

本集会では、様々な時間スケールにおけるサンゴの分布境界に関して横断的な議論を行うために、生態学、集団遺伝学、地質学の研究者にお集まりいただき開催されました。北限周辺でのサンゴの繁殖と加入プロセス、数キロから数百キロメートルスケールでのサンゴ個体群内の遺伝的多型に着目した個体群構造、また、地質学的タイムスケールでの分布境界の変遷など、幅広い分野から先進的な発表が行われました。30名近い方々にご参加いただき、質疑応答も活発で、本トピックに対する関心の高さが伺えました。今後、サンゴ以外のサンゴ礁生物を対象とした分布境界の集会も企画・開催していければと、気持を新たにしました。

自由集会 ③蛍光撮影技術を生かした海洋生物イメージングとモニタリング (終了しました!)

オーガナイザー:古島靖夫・丸山 正(海洋研究開発機構) / 篠野雅彦(NMRI)/鈴木貞夫(O.R.E)

 サンゴなど多くの海洋生物に蛍光物質があることが知られています。我々は、その現場撮影技術の開発は多岐にわたる海洋生物研究に利用できるのか、不足している技術や調査は何か、について分野横断型の議論が出来る場を設けその可能性を探ることを目的として、昨年度に引き続き本自由集会を開催させて頂きました。

 今年度は、「蛍光撮影技術を生かした海洋生物のイメージングとモニタリング」と言うテーマに主眼を置き、海洋工学・海洋物理の立場から話題提供を行い、海洋生物学、生態学、生理学、水産学等の多分野にわたる方々との議論の場を持ちました。自由集会の最後には、蛍光撮影手法のデモンストレーションを、実際に生きている海洋生物(ヒトデやカニなど)を対象に行い、参加者の方々に蛍光撮影を体験して頂きました。

 議論の中で、蛍光撮影技術は、石灰層に生息する3~5㎜の小さなオニヒトデの探索や駆除、潜水調査が困難な場所のサンゴ分布調査(サンゴ自体を見つける)に使えそうであるとの意見を頂きました。また、現行の蛍光撮影方法は一定波長の励起光によって撮影を行いますが、励起光を可変式にすることにより、GFPによる蛍光、クロロフィルによる蛍光、色素などの撮影が可能になり、さらにはサンゴの白化予測等に応用できるのではないかとの議論がなされました。

 海洋生物の蛍光は、未解明な点が多々あります。本蛍光撮影技術は、非破壊の光学的なイメージングとして非常に良い方法です。現時点では、生理学的な側面は、ほとんど仮定に基づいた話になっています。ゆえに、今後実験室での研究に加えて現場での蛍光撮影が可能になると、蛍光の生理学的な役割や、サンゴの生理状態との関係などが明らかになり、サンゴなどの生理学的状態のモニタリングに繋げられるのではないか、と考えています。我々は、今後もこのような議論の場を継続的に持ち、技術的な側面のみならず、生物学、生態学、環境学という分野に発展していけたらよいと思っています。そのような眼でみていただけるとありがたいと思っております。

懇親会若手会企画

「サンゴ de ビンゴ」 (終了しました!)

2013年5月30日、私は若手の会の友人らと一緒にコユビミドリイシの放卵放精を観察するために琉大の瀬底実験所へ向かっていました。その車中にて、まるで雷に打たれたかのように突然一つのアイディアが生まれました。それが第16回大会の懇親会にてサンゴ礁学会若手の会の有志で実施した企画『サンゴdeビンゴ』です。

本企画は学会員がお互いの研究と活動に興味を持ってもらうことを目的としたもので、ビンゴのカードは要旨集に記載されているキーワードを用いた特別なものです。うまく盛り上がるか不安でしたが、実際にやってみると当日の口頭発表で聞いたばかりのキーワードが発表されたり、キーワードを会場にいる学会員に説明してもらったりと、本大会を振り返りつつ参加者全体で盛り上がりました。また、今回はより楽しく参加してもらえるように豪華な賞品(リゾート宿泊券など)を用意しました。そのため、発表されたキーワードに参加者は一喜一憂しつつ、ビンゴを達成した人もそうでない人も本企画を楽しんでくれたようです。

日本サンゴ礁学会には大学や企業、NPOなどの多様な立場の学会員が集まり、発表される研究や保全活動などの分野も多岐に渡っています。本企画で見聞きしたキーワードを話のネタに学会員同士の交流が深まり、サンゴ礁研究と保全活動の発展へとつながれば幸いです。また、今後も学会員の交流が深まるような企画を続けていこうと思っています。良いアイディアをお持ちの方は、ぜひ若手の会までご一報ください。

(仲栄真 礁)

 
 
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