調査安全委員会
設立の趣旨
サンゴ礁調査安全委員会は、サンゴやサンゴ礁に関する野外での調査・研究に伴う会員の事故防止や安全管理意識の向上を目的として、2001年11月1日に設立されました。主な活動内容は、会員から寄せられた事故の事例,各種研究機関の事故防止策や安全管理体制といった情報を収集・整理し、それらをまとめた結果を年会・ニュースレター・学会ホームページといった学会に関する様々な媒体を通して会員に提供するというものです。こうした情報をもとに会員である私たち一人一人が、事故防止や安全管理に心がけて野外での作業や調査を行うことは、学会全体での事故防止や安全管理意識の向上だけでなく、日本でのサンゴやサンゴ礁の野外調査・研究能力のレベルアップへとつながります。本委員会は、寄せられた意見や情報を交換・共有する機会を積極的に提供することによって、学会から一人として事故者を出すことのないよう努力していきたいと考えています。
サンゴ礁学会 調査安全委員会一同
組織
調査安全委員会は、大学教員、大学付属機関や公的研究機関の研究員、そしてNPO法人の役員といった様々な職に従事する以下のメンバーによって構成されています。これらの構成員が、活動内容の決定、安全メーリングリストの管理・運営、そしてsangoメーリングリストや学会ニュースレターおよびこのホームページへの掲載記事の選定や作成などを主に行っています。私たちの活動に賛同される方もしくは興味をもたれた方などいらっしゃいましたら、ご連絡ください。一緒に活動していきませんか?
安全委員会構成員
委員長 鈴木倫太郎
菅 浩伸、中井達郎、中野義勝、中村崇、目崎拓真、山野博哉(敬称略、五十音順)
主な活動内容
2001年11月の設立以来、調査安全委員会は以下のような活動を行ってきました。お世辞にも活発な活動とは言いがたいですが、今後も地道な活動を継続して行うことによって、野外での調査・研究時の事故防止・安全管理意識の向上を図りたいと考えています。そのためには、会員の皆様からの積極的な意見や要望と情報提供が必要です。皆様のご理解とご協力を是非ともよろしくお願いします。
以下は2016年12月に行われた調査安全委員会主催自由集会の内容となります。
【研究のためのフィールドワークにおけるSCUBA潜水のスキルと資格に関する現状と課題】
オーガナイザー:中井達郎
日時:2016年12月1日18:15~20:30 場所:沖縄タイムスビル5F会議室 参加者数:17名
近年、サンゴ礁研究のフィールドワーク現場では、潜水士免許の取得の徹底をはかる一方で、日本では労働安全衛生法に規定された国家資格(免許)である潜水士免許制度の課題も問題となってきている。たとえば、潜水士免許がスキルの検定をともなわない筆記試験のみによる認定であること、筆記試験が日本語のみによる実施であることなど。後者は外国人研究者を日本で雇用する場合の課題ともなっている。今回は、特に発表者をお願いせずに、情報交換と議論を行い、課題の整理と問題意識の共有を目的に自由集会を開催した。
自由集会の冒頭、2016年11月14日に、沖縄本島・伊江水道で発生した沖縄科学技術大学院大学(OIST)の職員の潜水事故について、中野義勝氏(琉球大学)らから、この時点で把握されていた状況の報告をしていただいた(事故の概要は文末を参照こと)。
この事故事例から見えてくる課題や参加者が現実に抱えている問題・経験などから、研究における潜水活動とその安全対策に関わるさまざまな課題について活発な議論が行われた。主要論点は以下の通りである。
①研究潜水者の潜水技術、安全対策、それらに関する教育の問題
・研究者自身の潜水技術の向上・維持、新しい潜水技術の習得・習熟などの講習が必要。
・無計画な潜水、無謀な潜水を避けるためのコンプライアンス遵守の徹底。
・研究者向けのライセンス、資格の検討。
・潜水士資格取得の必要性と筆記試験のみによる資格取得の限界
②各組織・団体での安全管理体制
○研究者による研究のための潜水活動(フィールド・ワーク)が、所属する組織・団体内で業務として認識されていないケースも多い。そのため以下の点で問題がある。
・放射線の取り扱いなどのような一元的な安全管理体制がない。
・そのための業務予算化もない。
このことは、潜水士資格の根拠法である労働安全衛生法(安衛法)の問題でもある。
○教育現場での学生についての安全管理体制の未確立。
・学生は業務として位置づけられない。
・教員の義務と責任
③法制度上の課題
現在の法制度の中では、労働安全衛生法とその下の高気圧作業安全衛生規則によって潜水士資格がもうけられている。また高気圧作業安全衛生規則では、潜水士を雇用する事業者に対して安全管理のための責務が規定されている。
しかし、これらの法制度は土木や漁業などにおける潜水作業がもともとの対象であり、研究者による潜水活動(フィールドワーク)に当てはまらない側面がある。
・潜水士資格試験、筆記のみで、実技はない。
・規則ではフーカー潜水などが想定されており、スキューバやさらに新しい潜水技術(リブリーザーなど)に制度が対応できていない。
・学生は被雇用者ではないので、全くの想定外である。
・外国人研究者による潜水調査、潜水業務への対応は想定されていない。そのために、潜水士の資格試験は日本語のみである。
なお、外国人のための潜水士資格取得については、沖縄県が指定された「国家戦略特区」(平成26年5月指定)の中で外国人ダイバーの受け入れのために潜水士試験の外国語対応を行うという基本事項がある。
■今後の対応
○研究者向けの潜水技術・安全講習などの研修制度を検討する。
○海岸・浅海域など野外での調査活動を行う他分野の団体などとの情報交換をはかる。
○外国人潜水士資格問題について関係機関に働きかける。
○沖縄県が指定された「国家戦略特区」の基本事項として唱われた「潜水士試験の外国語対応」の推進を関係機関に働きかける。他の研究団体などとの共同要請なども検討する。
○研究のための潜水活動・フィールドワークの安全対策に関するアンケートを実施する。その際、会員個人を対象とするアンケートと大学・研究機関対象のアンケートの実施を進める。
このような活動を通じて、サンゴ礁研究・教育における潜水活動をはじめとするフィールド・ワークの活性化につなげたい。
【2016年11月14日OIST潜水事故の概要】(中野氏らの情報やOIST HPによる)
事故は、本部半島-伊江島間の水深約60m付近でのリブリーザー潜水による潮流計設置作業において発生した。当時の海況は良好であった。作業は、2名のOIST職員によって始められた。しかし、作業開始時(エントリー時)に、1名の潜水機材が不調のため、潜水を中止し船上に戻った。一方のもう1名は潜水を行い、作業を継続したものと思われるが、その後浮上してこなかった。現在も行方不明。船上で待機していた1名は不明者の捜索にあたったが、減圧症で入院治療、その後退院されている。
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サンゴ礁学会ニュースレター掲載記事
2002年1月
「第一回調査ダイビングにおける事故防止と安全管理に関するアンケート」の実施
2002年10月
公開ディスカッション「調査ダイビングにおける事故防止と安全管理-アンケート結果をもとに-」の開催
2003年1月
事故防止に向けての呼びかけ(学会ニュースレター16号)
2003年7月
事故防止に向けての呼びかけ(学会ニュースレター18号)
2004年4,8月
海洋科学技術センターでの潜水技術研修の紹介(学会ニュースレター21号, 22号)
2004年11月
「第二回調査ダイビングにおける事故防止と安全管理に関するアンケート」の実施
2005年4月
事故防止に向けての呼びかけ(学会ニュースレター25号)
2005年11月
公開ディスカッション「東京大学における潜水作業中の死亡事故について(→詳細はこちら)」の開催
2006年11月
学会ホームページ内に調査安全委員会のページを作成
関連ウェブサイト・書籍など
ここでは、野外調査中の事故防止や安全管理に役立つ情報を紹介していきます。現状では、紹介できる情報はわずかですが、今後もこれらの関連情報が集まり次第、随時更新していきたいと思いますので、お薦めのサイトや書籍などありましたらご連絡ください。
関連ウェブサイト(リンク準備中)
関連文献(リンク準備中)
日本サンゴ礁学会第5回大会開催中に「調査ダイビングにおける事故防止と安全管理-アンケート結果をもとに-」と題して日本サンゴ礁学会サンゴ礁調査安全委員会の主催によって公開ディスカッションが行われました.この内容は,2002年1月に日本サンゴ礁学会会員を対象に実施されたアンケートの集計結果をもとに,調査に伴う事故防止と安全管理に関する議論や情報交換を行うことによって,個人の安全管理意識の向上と今後のサンゴ礁研究の発展に役立てようというものでした.
アンケート結果は,学会誌とともに11月に会員に送付されました.その結果からは,予想以上に多くの人が何らかの事故(潜水,調査中の海象や気象の変化に伴う事故,船,調査・潜水調査計画に関わる事故など)を経験しており,調査ダイビングにはファンダイブと異なる多くの危険が伴うことが明瞭となりました.こうした事故の防止や安全管理に関しては,国の研究機関や民間の企業では厳格な規定が存在するなか,多くの大学ではこれといった規定はなく,個人的な努力と力量の範囲で自らと学生の安全管理を維持しているというのが現状でした.このことから,会員の所属機関によって意識と対応がそれぞれ異なり(大学の考える“自己責任”という責任体制は,ダイビングが調査である以上あり得ないとする厳しい意見もありました),すべての機関で通用するような事故防止と安全管理に関する一律のガイドラインの制定は,非常に困難であるということが分かりました.今後の方策については,個人技術の向上,安全を優先した調査計画の策定,バディシステム・船上監視員・陸上との連絡システムなど潜水チームの構成,教育や体制の整備,地元の情報の重要性,法令や保険,意識改革の必要性などが指摘されました.
こうした問題点を踏まえて公開ディスカッションは行われ,潜水計画書の作成・提出の徹底化,再圧チャンバーのある施設・病院などの情報のリンク,Cカードの取得・提示,保険の加入,事故発生時の行動マニュアルの作成,今後もこのような討論の場を学会期間中のセッション,学会のメーリングリスト・ホームページ・ニュースレター上で継続すべきなどの様々な具体的意見が出されました. 安全委員会の今後の活動としては,学会に関する様々な媒体を通じて,事故の事例,調査危険地域,様々な研究機関での安全管理体制などの事故防止・安全管理に関わる様々な情報の交換を行っていきたいと考えています.こうした活動は,学会全体での安全管理意識の向上調査能力や研究のレベルアップにもつながることが期待されます.学会員から1人も重大な事故を出さないためにも会員の皆さまからの様々な情報をお待ちしています.
日本サンゴ礁学会サンゴ礁調査安全委員会一同
夏は、海洋もしくはその沿岸域での様々な研究や業務が、一年のなかで最も盛んに行われる季節です。この夏の調査や作業に向けて具体的な計画や準備を立てられている方、あるいは、すでに調査・作業ともに無事完了してホッとされている方も多いと思います。しかし、その際に想定される各種の事故やトラブルの防止、万一それらが起こった場合に行うべき適切な対処法は、それらの計画や準備のなかに十分に盛り込まれているでしょうか。大学に所属する私にとって、自分の研究のみならず学生の卒論や修論指導のためにサンゴ礁に行く機会が圧倒的に増えるこの時期は、思う存分泳ぎ回ることができて嬉しい反面、(特に学生の)安全管理に対して非常に神経質にならざるを得ないことが毎年悩みの種です。
ところで皆さんは,昨年11月の日本サンゴ礁学会第5回大会期間中に、「調査ダイビングにおける事故防止と安全管理-アンケート結果をもとに-」と題して日本サンゴ礁学会サンゴ礁調査安全委員会の主催による公開ディスカッションが行われたことをおぼえていらっしゃるでしょうか(詳細は、ニュースレターNo.16のP3をご参照下さい)。私を含むサンゴ礁調査安全委員会一同は、学会期間中だけでなくホームページやニュースレターなどの媒体も通じて、海洋域での調査や作業に携わる様々な機関の人々が、討論や情報交換を積み重ねていく機会がこれからもますます増えていくことを願っています。会員である私たちが、常に安全管理に心がけて調査や作業を行うことにより、事故やトラブルを回避できる能力を身につけることは、学会全体での安全管理意識の向上や調査・研究能力のレベルアップへとつながります。そのためには、まず皆さんからの積極的な情報提供が必要です。前回の公開ディスカッションの折には、海洋技術センターの方から、当センターで潜水を伴う技術者や研究者を対象に行われている潜水技術研修の資料(JAMSTEC, 2000)のコピーを送付していただきました(この場を借りて改めてお礼申し上げます)。提供していただく情報としては、事故やトラブルの事例とその対処法、調査危険地域、様々な研究機関での安全管理体制などを想定しています。このような議題で討論を行いたいとか、どこどこの地域で安全に調査(作業)を遂行する前に地形や海象に関するローカルな情報が知りたいなどのご希望のほか、今後の活動内容へのアドバイスなどがありましたら、是非サンゴ礁調査安全委員会までご連絡ください。
サンゴ礁安全調査委員会 杉原 薫
スクーバ潜水をスポーツという観点からとらえた場合、陸上における他のスポーツと比べて、極めて短時間でマスターできるのが特徴である。それは、潜水を行う際の主な運動がフィンキックであるために、本来、その技術を習得し、さらに、うまい呼吸法さえマスターすればよいからである。ところが、近ごろはBCの普及に伴い、その便利さに甘んじて、十分なフィンキックができないまま潜水を楽しむレジャーダイバーが存在することには驚かされる。確かに、碧く澄んだ海中の光景は、限り無くダイバーを魅了するが、フィンキックがうまくできなかったために仲間とはぐれたり、船や陸に辿り着くことができなかったために、事故に遭遇することがある。楽しいはずの潜水だが、その裏には常に危険が潜んでいる、ということを忘れてはならない。
そもそも潜水は、水中で、しかも高圧といった特殊な環境下で行われるため、通常、われわれが地上で行う各種のスポーツでは起こり得ないような事故や障害が発生する。例えば、圧外傷や減圧障害、それに溺水などはその典型である。また、ひとたび空気の供給が途絶えたり、意識障害が起こったり、行方不明になった場合など、陸上では必ずしも大事故につながるとは限らない事態が、潜水では死に直結する重大事故につながる可能性が非常に高くなる。特に、溺水やエア切れの場合は、ほとんどがパニックを引き起し、逃げ場のない水中では、生還することが困難となる。潜水による死亡事故の原因に関しては、毎年報告される「潜水事故の分析:日本海洋レジャー安全・振興協会編」に集計結果として示されるが、初心者では、技術不足や監視体制の不備が、ベテランでは、残圧チェックの怠りやバディ潜水の不遵守、それに気象・海象の見極めの甘さなどといった馴れによる油断とも思える行動が重大事故を引き起こしているようであう。そして、近年、体調の不調が原因となって死亡事故が増加してきていることも無視できない。したがって、潜水を安全に行うためには、まず、「十分な知識・技術を身につけ、決して無理をしない」「十分な監視体制を敷き、いかなる場合も単独潜水をしない。」それに、「万全の体調で臨む」といったことなどを再認識することが肝要である。
海洋科学技術センター 総務部 竹内久美
海洋科学技術センター(平成16年4月1日より、(独)海洋研究開発機構)では、開発当初より、国内における唯一の公的な潜水の研修機関として、潜水の技術に関わる研修事業を実施している。開発当初は、主にヘリウム-酸素の混合ガスを用いた深海潜水に携わるダイバーを養成する目的で実施してきたが、その後は社会的ニーズの変遷の伴い、現在はスクーバ潜水を主とした研修を行っている。当該研修の参加者はここ数年来、年間約350名程度となっているが、その多くは全国の警察(機動隊)や消防の水難救助隊員である。
そもそも、かれらが潜水を行うのは人や車両等の「捜索」や「回収」といったことが主な目的であるために、その範囲は海域のみならず河川や湖沼、それにダムに及ぶことさえある。しかも、その多くは視界不良の水域である。そこが一般のレジャーダイバーたちの行う潜水とは、明らかに異なった点である。要するに、かれらは潜る場所、潜る条件を選択できないのである。
そこで、そのような現場で活躍する隊員たちに対する研修の概要と安全対策について、当センターで実施している研修を例に紹介する。
当センターでは、5日間コースと10日間コースの研修を設けており、前者は、午前中は主に講義、午後はプールでの基礎訓練といったカリキュラムで、これらを通して、基礎的な知識・技術を教養しているが、特に講義では、潜水事故の事例などを紹介しながら、「潜水の怖さ」を教えている。また、プール訓練では、まず、当日の訓練内容をビデオとホワイトボードを用いて説明し、さらに指導員がデモを行うことにより、内容の理解を深めている。そして、訓練開始前はウエットスーツを着用したのち、3点セット(スノーケル、マスク、フィン)を着けて約30分間のスノーケリングを行わせ、フィンキックによる泳力を養っている。訓練中は指導員がプールの中、のぞき窓、それに水中カメラを用いてプールサイドから常に監視を行っている。
一方、当センターの地先で行う海域訓練では、岸壁や水面からの監視に加え、警戒船からの監視を行い、さらに、水中交話装置(ダイバー同士またはダイバーと陸上の監視者と間での交話)やマーカーブイを使用して安全管理に努めている。この海域は春先から夏場にかけて、例外なく赤潮が発生するために視界が数十センチとなることが珍しくなく、そのような時は、泡でダイバーの位置を確認するのは極めて困難となる。そこで威力を発揮するのが水中交話装置やマーカーブイである。特にマーカーブイは安価で扱いやすいものなので、常に使用している。
現在、使用中のものは船の防舷材となるシリコン製のもの(直径25cmの球形)で、それに10mm程度のローブを取付け、その先端をBCにくくり付けている。これはダイバーの所在確認のみならず、ダイバーと陸上(船上)の監視者との交信にも極めて有効に活用される。
以上のようなことを遵守することにより、潜水を安全かつ効率よく実施している。
海洋科学技術センター 総務部 竹内 久美
私たちサンゴ礁調査安全委員会は、野外調査時における事故防止・安全管理に対する各会員の意識と、それぞれが所属する機関の体制を評価するためのチェックリストを現在作成しています。昨年秋に国士舘大学で開かれた日本サンゴ礁学会第7回大会期間中には、これに関連してアンケート調査を実施しました。今回アンケートにご協力頂いたのは全26名で、期間中の学会参加者数が154名だったことを考慮するとごく少数でしたが、様々な所属機関の方からほぼ同数ずつの回答を頂きました。
今回のアンケートの内容は、1)所属と野外調査の枠組み、2)事故の経験の有無と事故の原因、3)事故防止・安全管理に対する意識の3項目に大別されていました。1)の回答結果からは、回答者の大半が調査時は2名以上で、スクーバ・スキン両方で行っているものの、スキンのみの調査を行っている大学の学部生や院生の中には、長期間1人で調査を行っている人もいることが明らかになりました。この問題は、今後大学の安全管理に対する姿勢という点では、改めて検討されるべき課題ではないでしょうか。また2)の結果から、全体の3割(ここ2年では1割)が事故に遭遇して(または遭遇しかけて)おり、そのほとんどが海中であったことがわかりました。その原因としては、潜降・浮上に伴う障害と調査器材や装置の欠如、故障もしくは破損が目立ちましたが、注目すべき点はこれらの人のほとんどがスクーバ経験本数は100本以上で、事故が予測可能であったと回答していることです。さらに3)の結果からは、回答者のほとんどがスクーバの資格を持っているものの、半数以上の人がスクーバを行う際のCカードの提示やその後のログブックの記入を行っていないことが明らかになりました。2)および3)の結果から感じられることは、残念なことに意外と多くの人が基本的な安全管理を怠っているということです。
今回行ったアンケート項目は、私たちがより汎用性の高いリスト作りを目指していたこともあり、項目数が多いうえにどれに当てはまるのか回答しづらいものが含まれていました。またアンケート結果から、個人の基本的な安全管理の欠如が多く認められたことで、まず基本的な項目をリストに含めるべきであるということを改めて認識しました。今後もこうした活動を通して、私たちは会員の事故防止や安全管理意識の向上に努めていきたいと考えています。また、今後の委員会の活動について御意見や御質問、御希望などありましたら御連絡下さい。