サンゴ礁イラスト
 

第15回大会2012

日本サンゴ礁学会 第15回大会報告

 3日間の大会参加者数は230 名となり、口頭発表47 件、ポスター発表85 件(NPOポスターコーナーを含む) の発表および熱い討論が行われました。懇親会では、若手ポスター賞および大会初の試みであったサンゴ礁保全活動奨励賞の表彰、更に日本サンゴ礁学会若手会の企画となる「思い出写真ショー」があり、興に乗った実行委員長が歌い出すひとコマもありました。
 夏のICRSも重なった今年度大会では、この数年の中では参加者数・発表数ともやや少なめとなりましたが、同じ東京大学で開催された1998 年第1回大会と比べてみると、初回は口頭発表のみ50 件だったのが、15回目を迎えて大会規模や運営ともに大きく進化・成長していることを実感します(第1回大会は近森委員長のもと山上会館で開催。山野さん、波利井さん、森本さん、田中義幸さん、梅澤さんらが大学院学生として運営に奮闘してくれました)。
 この変遷過程で、大会ごとに手作りだった大会運営の仕様が決まってきました。大会開催前1年間の新規会員の大会参加費を無料とすること、口頭発表を1会場で行うこと、そのためにポスター会場を充実すること、大会最終日に公開シンポジウムを行うことなどは基本的な仕様と思います。本大会では口頭発表(工学部213 講堂)とポスター発表(理学部小柴ホール周辺)の会場は分かれましたが、とくにポスターセッションの充実をはかりました。できるだけテーマの近いポスター間でも議論できる配置に工夫し、若手優秀発表賞をポスターから選出するとともに、ポスターのさわりを紹介する1人2分のスピードトークのセッションも設けました。スピードトークには若手を中心に30 件がエントリーしましたが、皆さん上手にまとめてくれました。また、ポスターセッション中に供されたコーヒーやチョコレート(とワイン)も好評でした。
 最終日公開シンポジウム後に、学会としてはじめてレクチャーを設け「サンゴ群集モニタリング」について4名の講師にレクチャーしてもらい、研究者だけでなく、NPO、民間、さらに官庁から40 名が受講しました。学会の社会への責務として、今後も是非継続していただきたいと思います。
 大会は基本的に学会とは独立して運営するという方針で、学会からの支援は10 万円の準備金(終了後返納)のみとなっています。参加者数が200 名を越える昨今の大会の準備と運営の負担が増している中、学会としての支援を考える時期にきているように思います。
 最後に大会が無事に終了しましたのは、実行委の栗原さん・服田さん(プログラム)、細野さん(会場)、浪崎さん(広報)、五十嵐さん・藤田さん(庶務)と、研究室・地球惑星科学専攻と大会参加の学生アルバイトの皆さんのお陰です。ありがとうございました。

中村 修子・茅根 創(東京大)

スケジュール (終了しました!)

<会場>
東京大学本郷キャンパス

工学部2号館213講堂(口頭発表、総会、シンポジウム)
理学部1号館小柴ホールおよび講義室(ポスターセッション、自由集会)
山上会館(懇親会)

<スケジュール>

8月1日(水)   発表・事前参加登録開始
9月14日(金)  発表・事前参加登録締切(電子メールによる受付)
10月5日 ⇒10日(水)  要旨締め切り(電子メールによる受付)
11月2日(金)  大会費事前払い振込み期限(これ以降は割引の効かない当日払いとなります。事前払いするには事前参加登録が必須です。)
11月21日(水) 午後 各種委員会 (理学部1号館)

11 月22 日(木)大会初日:評議員会、大会受付、口頭発表
10:00-12:00 評議員会 理学部1号館小柴ホール
10:30– 受付開始 理学部1号館小柴ホール前
13:00-18:15 口頭発表 工学部2号館213講堂
16:00– ポスター掲示開始 理学部1号館小柴ホール前、講義室
18:30-20:30 自由集会1、2  理学部1 号館839 室、710 室

11 月23 日(金)大会2 日目:口頭・ポスター発表
9:30-16:00 口頭発表 工学部2号館213講堂
16:15-18:15 ポスター発表(コアタイム:奇数番号) 理学部1号館小柴ホール前、講義室
16:30-17:00 スピードトーク 理学部1号館小柴ホール
18:30-20:30 自由集会3、4、5 理学部1 号館839 室、710 室、小柴ホール

11 月24 日(土)大会3 日目:口頭・ポスター発表、総会、懇親会
9:30-12:15 口頭発表工学部2号館213講堂
13:30-15:30 ポスター発表(コアタイム:偶数番号) 理学部1号館小柴ホール前、講義室
13:45-14:15 スピードトーク理学部1号館小柴ホール
15:45-18:15 総会、学会賞受賞講演理学部1号館小柴ホール
18:30– 懇親会山上会館

11 月25 日(日)大会4 日目:シンポジウム、レクチャー
10:00-12:30 シンポジウム(学会内) 工学部2号館213講堂
「サンゴ礁学の成果と展望」
14:00-16:30 公開シンポジウム工学部2号館213講堂
「変化する環境と生態系」
17:00-19:00 レクチャー理学部1号館3F講義室
「サンゴ群集のモニタリング法」

<講演発表プログラム>
第15回大会の講演発表プログラムはこちら

<総会・受賞講演>
日時:2012 年 11 月 24 日(土)15:45-18:15
場所:理学部1号館小柴ホール

<懇親会>
日時:2012 年 11 月 24 日(土)18:30-
場所:東京大学山上会館(小柴ホールから徒歩3分)
http://www.u-tokyo.ac.jp/campusmap/cam01_00_02_j.html

 
15回大会 公開シンポジウムなど(終了しました!)

<サンゴ礁学シンポジウム>【参加費無料】(終了しました!)

日時:2012年11月25日(日)
場所:東京大学本郷キャンパス工学部2号館213講堂
主催:新学術領域「サンゴ礁学」、共催:日本サンゴ礁学会
オーガナイザー:酒井一彦、山野博哉、茅根 創
参加費:無料 申込み:不要

午前の部 10:00~12:30 「サンゴ礁学の成果と展望」
対象:原則として学会会員(学会会員以外の方の参加も歓迎)
開 催趣旨:新学術領域「サンゴ礁学」の異分野連携課題の1つは、「ローカル・グローバル複合ストレスに対するサンゴ礁の応答を生物から生態系まで様々なス ケールで明らかにして、その応答モデルを構築すること」です。本シンポジウムでは、サンゴ礁学で得られたストレス応答の実態とモデルを紹介して、海洋や陸 域など様々な生態系を扱う研究者からコメントをいただきます。
講演者
①酒井一彦・井口亮(琉球大):
 サンゴは人為的環境変化に適応できるか?生態学と遺伝学連携の必要性
②鈴木 款(静岡大):複合ストレス下におけるサンゴ礁生態系・物質循環共生系の素過程
③灘岡和夫(東工大):複合ストレスの包括的評価・予測とサンゴ礁生態系応答モデル解析
コメント:小池勲夫(琉球大)、松田裕之(横浜国大)、竹中明夫(国立環境研)

午後の部 14:00~16:30 一般公開シンポジウム「変化する環境と生態系」
対象:一般の方々
開 催趣旨:生態系は現在、地球規模・地域的な環境変化によって破壊される危機にある。安定した環境下で維持されてきた生態系は、急激に変化する環境にどのよ うに応答するのだろうか。こうした変化する環境のもとで、生態系の保全、管理をどのように進めたらよいのだろうか。本シンポジウムでは、環境変化にもっと も敏感に応答するサンゴ礁で得られた知見とともに、陸域、海域における様々な時間空間スケールでの環境変化と生態系の応答、保全、管理の方策について、紹介します。
講演者
①茅根 創(東京大):地球温暖化で荒廃するサンゴ礁
②竹中明夫(国立環境研):温度の変動と生物の分布:暖かい時代と暑い年・涼しい年
③山野博哉(国立環境研):陸の変化とサンゴの変化
④松田裕之(横浜国大):海が死ぬというのは本当なのか

<レクチャーシリーズ>第1回【要参加費】(終了しました!)

「サンゴ群集のモニタリング法」

日時:2012年11月25日(日)17:0019:00
場所:東京大学本郷キャンパス理学部1号館3F講義室
参加費:有料

日本サンゴ礁学会では、サンゴ礁を取り巻く様々な話題の最前線の情報と現状を伝えるために、学会内からそれぞれの話題の専門家を招いた、レクチャーシリーズを企画しています。第1回目となる今回は「サンゴ群集のモニタリング法」をテーマに、サンゴ群集のモニタリング法の紹介と現場での取り組み、結果の解釈の仕方とその注意点についてレクチャーします。サンゴ群集のモニタリングは、生態系スケールでの研究や保全の基礎となるもので、サンゴ礁の勉強をはじめた学生さんにとって有益と思います。さらに、サンゴ礁における様々な事業で生態系への影響評価をモニタリングしたり、保全や移植活動で群集のモニタリングが必要な事業者にとっても、標準的なモニタリング法や得られるデータの実際の意味、その使い方について理解することは重要です。

● 講師:

山野博哉(国立環境研):様々なモニタリング法(東海大学出版会「サンゴ礁学」第4章「サンゴの海を調べる」をテキストとして)
茅根 創(東京大):長期モニタリングの例
岡地 賢(コーラルクエスト)山本広美(沖縄美ら島財団):モニタリングの実際
中野義勝(琉球大):モニタリング結果の使い方

● 参加費:

通常・学生会員、賛助会員(何名でも):無料
会友、団体会員:1000円(1人あたり)
非会員:3000円

申込みは大会事務局(15thjcrsサンゴgmail.com ※サンゴを@に変換ください)まで電子メールで、サブジェクトを「レクチャー参加希望」として、参加者氏名、所属、会員種別と連絡先メールアドレスを明記して申し込んで下さい。会場の都合上、先着40名までとします。

<サンゴ礁保全委員会全体会>【参加費無料】(終了しました!)

日時:11月21日(水)18:3020:30  東京大学理学部1号館3F336室

1. サンゴ礁保全の国際的動向

話題提供: 岡地 賢、安部真理子、中谷誠治

概要:今年度は、ICRS、IUCN、COP11 など、サンゴ礁を含む、自然環境保全関連の国際的イベントが多く行われました。本自由集会では、サンゴ礁保全に関する国際的動向について報告し、国内でのサンゴ礁保全活動とのつながりと今後の方向性について議論します。

報告概要:

① オーストラリア政府は、グレートバリアリーフ利用者に課すリーフタックスの導入やゾーニングプランの見直しなど、最近の十数年間にサンゴ礁保全策を強力に推進してきました。それでもなお、1985 年から現在までの27 年間で平均サンゴ被度は半減しています。モニタリングデータの解析結果に基づいて新たなサンゴ群集の保全策を検討するため、ICRSの直前にケアンズ近郊で開催された関係者会合の概要を紹介します。(岡地)

② IUCN(国際自然保護連合)は1948 年に設立された国家、政府機関、非政府機関で構成された国際的な自然保護機関です。今年9 月6 日~ 15 日に韓国の済州島で行われた、4 年に1 度の大きなイベント;第5 回世界自然保護会議には、世界180 カ国余りの約1100団体から1万人を超える参加者があり、気候変動や生物多様性などのテーマのもと、さまざまな分野の議論が行われました。海洋の保全についての概要を紹介します。(安部)

③ ミクロネシアでは陸域の20% と沿岸海域の30% を効果的に保全しようとするミクロネシア・チャレンジが2006 年に開始されました。パラオでは保護区ネットワーク法の施行によりこれを達成しようとしています。また、2009 年には必要なコストを賄うため環境税が導入されました。これらの仕組みと背景、将来の課題について報告します。(中谷)

2. サンゴ礁学会レクチャーシリーズへの協力について

3. 最近のサンゴ移植動向と保全委員会の取り組み

4. その他、委員会メンバー報告等

<自由集会(提案募集型企画)>【参加費無料】(終了しました!)

自由集会 ① Mesophotic reef studies in Japan

日時:11 月22 日(木)18:30~20:30 会場:理学部1号館8F839室

オーガナイザー: Frederic Sinniger (JAMSTEC) / Saki Harii (University of the Ryukyus) /James Reimer (University of the Ryukyus) / Marc Humblet (Nagoya University)

This workshop will summarise recent research done on Japanese mesophotic coral reefs in different domains (biology, geomorphology, environmental science and conservation). The aim of this workshop is to promote communication between interested researchers and identify the needs for Japanese mesophotic research to become a leader in this field.

 

自由集会 ②国内のサンゴ群集モニタリング:サンゴ礁保全への意志決定支援ツールとしての活用

日時:11 月22 日(木)18:30~20:30 会場:理学部1号館7F710室

オーガナイザー:(主催)サンゴ礁保全委員会(中野義勝・井口亮)、(共催)沖縄サンゴ礁保全推進協議会

 現在国内では、多くのサンゴ群集モニタリングが行われています。しかしながら、多くの自然環境モニタリングでも見られるように、その意義についての議論が十分でなく、その必要性についてのコンセンサスを得ることが難しくなっています。モニタリング結果を、

地域のサンゴ礁保全の施策立案の意思決定に不可欠な要素として位置づけるためにも、そのデータ処理と活用の方法が必要とされています。本自由集会では、これらを見据えて、モニタリングデータの事例及び整理、統計モデリング、意思決定支援ツールへの応用などについて議論したいと思います。

 

自由集会 ③サンゴ蛍光の現場撮影技術をサンゴ礁研究に生かすには…?

日時:11 月23 日(金)18:30~20:30 会場:理学部1号館8F839室

オーガナイザー:古島靖夫・丸山 正(海洋研究開発機構) / 篠野雅彦(海上安全技術研究所)

 多くのサンゴ類が蛍光を発していることは良く知られています。しかし、蛍光を発することが、サンゴ類にどのような意味を有しているのか?また、それがサンゴ礁の他の生物に対してどのような意味を有しているのか?近年問題視されている白化との関係はあるのか、など多くの生理・生態学的な問題が多く残されています。我々は、サンゴ類やその他の海洋生物が発する蛍光を現場でイメージングし、対象としたサンゴの状態( 健康状態、環境や、周囲の生物との関係など)と蛍光との関連を明らかにすることで、蛍光イメージングがサンゴの状態をモニタリングする有効なツールになると考えています。そこで、本自由集会では、我々が開発したサンゴ蛍光の現場撮影装置と多分野にわたるサンゴ礁研究とをどのように融合させたらよいか、足りない技術や調査は何か、そのためには何をすべきか、について分野の隔てなく議論したいと考えています。

 

自由集会 ④~若手の異分野連携を考える~日本サンゴ礁学会若手会

日時:11 月23 日(金)18:30~20:30 会場:理学部1号館7F710室

オーガナイザー:井上志保里(東京大学) / 高橋麻美(琉球大学)

 前半は若手によるサンゴ礁の連携研究例・これからやっていきたい連携研究案を紹介してもらい,参加者で自由に議論します。また本集会に合わせて「日本サンゴ礁学会若手会」を設立し、後半ではワークショップとして若手の立場を生かした異分野間・専門外との継続的な交流・連携、そしてサンゴ礁研究の発展へつなげるための戦略を、ワールドカフェという形式で議論し、若手のネットワークを構築することを目指します。本集会では前半は若手に限らず全ての方の参加を歓迎致します。後半のワークショップは若手のみで行います。※ 日本サンゴ礁学会若手会では若手の目安として「雇用者側の常勤職員の方以外」を対象としています。サンゴ礁に関わっている方、興味がある方、一般の方やダイバーも大歓迎です。

 

自由集会 ⑤サンゴ礁生態系の状態とサンゴ礁生態系保全行動計画に関する意見交換会

日時:11 月23 日(金)18:30~20:30 会場:東京大学小柴ホール

オーガナイザー:(主催)環境省自然環境局自然環境計画課/自然環境研究センター、(共催)サンゴ礁保全委員会

「サンゴ礁生態系保全行動計画」(平成22 年環境省)と、「サンゴ礁保全再生行動計画」(平成19 年日本サンゴ礁学会保全委員会)について、進捗状況等の情報を日本サンゴ礁学会会員の方々と共有するとともに、今後のサンゴ礁生態系保全についての方向性、学会の役割、両計画の連携等について議論します。

 
 
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