サンゴ礁
 

第20回大会2017

第20回大会報告

 ※ニュースレター76号では写真付きで報告がご覧になれます。 ⇒ NLはこちら

11 月23 日(木)から26 日(日)にかけて、東京工業大学大岡山キャンパスにて、第20 回大会が開催されました。本大会は法人化がスタートした初めての大会であるとともに、20 回記念大会でもあり、期間中に法人化& 20 周年記念セレモニーも催されました(詳細はセレモニー報告をご覧ください)。
その効果からか、本大会は例年よりも多い223 名もの参加がありました( うち、会員191 名、非会員42 名)。発表件数は口頭発表が全部で58 件、ポスター発表は66 件でした。今回は英語セッションを明示したこともあってか、タイやインドネシア、台湾等の海外からも多数の参加があり、英語セッションには14 件の発表がありました。外国語対応には気を付けたつもりではありますが、対応がまだ至らない点も多くありました。今後、大会の国際化にむけた整備が進み、海外からの参加者がさらに増えていけば良いなと思います。
また、本大会では慶応大会で試みられたテーマ・セッションが拡充されました。テーマ・セッションについての説明や宣伝が不十分で認知度が低かったことは反省点ではありますが、それでも3 件のテーマ・セッションの提案がなされました。各セッションでは、それぞれ生物多様性やオニヒトデの大量発生、生態系のレジリエンスなどのテーマについての最新の知見が発表されるとともに、それぞれが抱える問題などについて議論されました。開催にあたっては、コンビーナーの方々には、議論が深まるように招待講演者の招へいやプログラム編成などでご尽力頂きました。この場を借りて御礼申し上げます。今後、このテーマ・セッションが定着し、深い議論の場としてさらに盛り上がっていくことを期待しています。
自由集会では、5 件の企画が催されました。毎年恒例の企画から、新たな研究の種やアウトリーチに関することなど、通常の学会発表では聴けないようなことがフランクに議論され盛り上がっていました。場所を居酒屋に移して議論(?)を続けていた企画も多くあったようです。
保全活動ポスターコーナーでは3 件の発表がありました。また、今回新設した小、中、高校生による研究発表コーナーでは6 件の発表があり、それぞれ柔軟な発想によるユニークな研究発表がなされました。ここで発表された研究者の卵たちと、近い将来、またサンゴ礁学会で会えることを願っています。
懇親会では、若手の会による「サンゴ礁学会の20年を振り返るスライドショー」が企画され、年配の方にとってはサンゴ礁学会の変遷を懐かしむ機会となり、また若手の方には年配の先生方の意外な姿を発見するなどで大いに盛り上がりました。
最終日には、公開シンポジウム「危機にあるアジア・太平洋沿岸生態系の現状と課題-サンゴ礁学会の「次の10 年」に向けての国際連携構築へ」が開催され、アジア-太平洋域で活躍されている研究者を招き、各国の沿岸生態系の現状や国際連携の重要性について議論されました。
(詳しくは公開シンポジウム報告をご覧ください)
不手際もありましたが、概ね順調に開催することができました。大会運営にご尽力頂きました実行委員の皆様およびご協力頂きました参加者の皆様に、この場を借りて深く御礼を申し上げます。

文責:中村 隆志(東京工業大学 環境・社会理工学院)

日本サンゴ礁学会法人化セレモニー

2017 年10 月に一般社団法人となった日本サンゴ礁学会の新たな発足を記念し、法人化セレモニーが、第20 回大会3 日目の2017 年11 月25 日(土)15 時30 分から17 時30 分、東京工業大学ディジタル多目的ホールにおいて開催されました。
はじめに、日高 道雄会長が、1997 年に任意団体として日本サンゴ礁学会が設立された経緯を振り返り、20 年を経て成熟した学会が法人化してますます発展し研究を推進するとの決意を述べられました。次いで茅根から、設立から現在までの学会の動向について、会員数や学会発表の変遷を紹介して、今後サンゴ礁に関わるより広い分野の研究者が会員として参加する学会となることが必要であることを述べました。鈴木 款前会長からは、任意団体として社会的責任を果たすことができない問題に様々な場面で行き当たり、法人化を進めた経緯が紹介され、法人化による学術面からの社会的責任をより一層果たしてほしいとの期待が述べられました。
学会からの法人化の経緯の紹介に続いて、4 名の来賓からご祝辞をいただきました。日本学術会議の花木 啓祐前副会長からは、学術会議で会員数が千名を超える学会の法人化を進めてこられたことが紹介され、その規模には満たない本学会が法人化した努力を応援したいとの言葉をいただきました。環境省自然環境局自然環境計画課の奥田 直久課長からは、本学会がこれまでにも同省のサンゴ礁保全事業などに寄与して来たこと、法人化してこれまで以上に政策策定に関わってほしいとの要望が寄せられました。次いで、日本熱帯生態学会の藤間 剛学会連携幹事(ご都合で欠席のため、司会の灘岡理事が原稿を代読)から、関連学会との連携をさらに強めてほしいとの希望をいただきました。さらに海外から、国際サンゴ礁学会評議員のThamasak Yeemin 教授より、アジア太平洋におけるサンゴ礁研究の推進にも、本学会の貢献への期待が寄せられました。
引き続いて、本学会の近森 正名誉会員からは学会が大きく発展したことの喜びと今後の期待が、大森信名誉会員より、日本サンゴ礁学会の先がけであるパラオのサンゴ礁研究等の先輩達の歩みが紹介され、法人化した学会がますます発展することへの期待の言葉をいただきました。最後に、司会の灘岡 和夫理事が、来賓からいただいた暖かい祝辞に謝意を表するとともに、期待に答えられる学会として成長させる決意を表明してセレモニーは終了しました。

文責:茅根 創(東京大学 日本サンゴ礁学会 庶務・会計担当理事) 

 

日本サンゴ礁学会第20回大会

日本サンゴ礁学会 第20回大会実行委員長よりごあいさつ (終了しました)

日本サンゴ礁学会第20回大会を、下記の日程にて東京で開催します。今年の大会は、学会法人化の記念大会であると同時に20回の節目に当たる大会でもあります。そこで、サンゴ礁学会の「次の10年」を視野に置いた新たな発展に向けての重要なステップとなる大会にしたいと考えています。皆様のご参加を心よりお待ちしております。

第20回大会実行委員長 灘岡 和夫
大会実行委員:中村隆志(幹事),渡邉 敦,吉開仁哉,茅根 創,
山野博哉,佐藤崇範,樋口富彦,岨 康輝,山本将史

日程:2017年11月23日(木)~11月26日(日)

会場:東京工業大学 大岡山キャンパス(http://www.titech.ac.jp/maps/
西9号館デジタル多目的ホール・講義室

〒152-8550 東京都目黒区大岡山2-12-1
大岡山駅(東急大井町線・目黒線)より徒歩5分

 

大会受付

● 大会受付は大岡山西9号館2階のエントランスホール内です。入口は西9号館の2階になりますのでご注意ください。口頭発表およびポスター発表も同じ2階フロアです。

● クロークを用意しておりますのでご利用ください。

 

第20回大会スケジュール

 8月21日(月)17:00 
テーマセッション企画応募締切

 8月28日(月)10:00 
事前支払・参加登録、研究発表申込開始
自由集会の申込開始、
サンゴ礁保全活動ポスターコーナー申込開始、
小・中・高校生によるサンゴ礁研究ポスターコーナー申込開始

 9月22日(金)17:00 
事前支払・参加登録、研究発表申込の締切
(これ以降は割引の効かない当日払いとなります。事前払いするには事前参加登録が必須です。)

 10月6日(金)17:00 
要旨締切(Webによる受付)
自由集会の申込締切、
サンゴ礁保全活動ポスターコーナー申込締切、
小・中・高校生によるサンゴ礁研究ポスターコーナー申込締切

 

☆大会スケジュール/案内☆

11月23日(木) 大会1日目

08:30-受付開始(大岡山西9号館2階エントランス)

09:00-12:30 口頭発表 ①(ディジタル多目的ホール)

11:30-12:30 口頭発表②(コラボレーションルーム)

13:30-14:00 旧総会 (ディジタル多目的ホール)

14:00-15:00 口頭発表 ①(ディジタル多目的ホール) 口頭発表②(コラボレーションルーム)

15:15-17:45ポスター発表(メディアホール)

18:00-20:00自由集会① (講義室W934) 自由集会② (講義室W935) 自由集会③ (講義室W936)

 

11月24日(金) 大会2日目 09:00-受付開始(大岡山西9号館2階エントランス)

09:00-10:00 口頭発表① (ディジタル多目的ホール)

10:15-11:30 口頭発表① (ディジタル多目的ホール)口頭発表②(コラボレーションルーム)

11:45-12:30 テーマセッション① (ディジタル多目的ホール)

12:40-13:40 代議員総会 (西8号館W311)

14:00-15:00 テーマセッション② (ディジタル多目的ホール)

15:15-17:45 ポスター発表(メディアホール)

18:00-20:00 自由集会④(講義室W934)自由集会⑤(講義室W935)

 

11月25日(土) 大会3日目

09:00-受付開始(大岡山西9号館2階エントランス)

09:00-11:00 テーマセッション③(ディジタル多目的ホール)

11:15-15:00 English session (ディジタル多目的ホール)

09:00-15:00 サンゴ礁保全活動&小・中・高校生によるサンゴ礁研究ポスター発表 (メディアホール)

15:15-17:45法人化・第20回記念セレモニー&学会賞等発表&受賞講演(デジタル多目的ホール)

18:00-20:00懇親会(緑ヶ丘6号館 大ホール)

 

11月26日(日) 大会4日目

09:00-受付開始(大岡山西9号館2階エントランス)

09:30-12:00公開シンポジウム・前半(ディジタル多目的ホール)

13:00-16:30公開シンポジウム・後半(ディジタル多目的ホール)

 

プログラム

第20回大会の口頭・ポスター発表プログラムは、下記アドレスからダウンロードできます。

https://www.dropbox.com/s/zseh4p9aeyp88iv/JCRS20%20program%20final.pdf?dl=0 

 

要旨集

第20回大会の要旨集(電子版)は、下記アドレスよりダウンロードできます(要パスワード)。

https://www.dropbox.com/s/5nyqbxiihwa9j6x/JCRS20_Abstract_book_v2.0.pdf?dl=0

パスワードに関する問い合わせは、大会実行委員会まで。

 

【一般公開シンポジウム】

「危機にあるアジア・太平洋沿岸生態系の現状と課題-サンゴ礁学会の「次の10年」に向けての国際連携構築へ」

日時:2017年11月26日(日曜日) 9:30-12:00, 13:00-16:30 (参加無料)

会場:東京工業大学大岡山キャンパス(西9号館デジタル多目的ホール)

内容:アジア・太平洋域は、Coral Triangleに代表されるように大変多様性の高い生態系を有しています。そこでの沿岸生態系は、サンゴや海草、マングローブなど様々な生物群集を包括しており、それが互いに結びつくことで豊かな生態系の基盤となっていると考えられています。しかし一方で、これらの生態系が様々な人為的な影響によって劣化の一途をたどっている現状があります。そのため、これらの生態系の基礎研究や保全に向けた科学的な知見の共有・社会への実装は急務となっており、国を超えた広いネットワークで共同研究を進めていく必要があります。本シンポジウムでは、このエリアで活躍されている国内外のサンゴ礁や沿岸生態系の研究者を招き、各地域の沿岸生態系の現状や最新の研究成果について発表して頂くとともに、同地域における横断的連携の必要性について語って頂きます。そして日本サンゴ礁学会や学会員の国際連携・展開に向けた議論を行います。

※なお、公開シンポでの講演は英語で行われます。また、パネルディスカッションは、パネリストの多くが海外招へい者であることからそちらも英語ベースで行います。会場からの質問は日本語でもけっこうです。

プログラムおよび要旨は下記からダウンロードできます。

https://www.dropbox.com/s/tcgrmck8vvo0xka/JCRS20%20Symposium%20Program.pdf?dl=0

 

Theme: Asia-Pacific coastal ecosystems in danger – Establishing international collaboration networks toward the next decade of the JCRS-

Date and Time: 9:30-12:00, 13:10-16:30, Nov. 26 (Sun)

Venue: Multi-Purpose Digital Hall, West Bldg. 9, O-okayama campus, Tokyo Institute of Technology, 2-12-1 O-okayama, Meguro-ku, Tokyo 152-8550 Japan

 

Aim: Asia-Pacific region, especially Coral Triangle area and its surroundings, are known for extremely high biodiversity in their coastal ecosystems, which have various biological communities such as corals, seagrasses, mangroves and others with interconnectivities among them. However, the ecosystems have been degrading due to various local and global scale anthropogenic impacts. Therefore, it is an urgent need to promote sciences for the ecosystem conservation and their implementation to the society through various international and transdisciplinary collaborations. In this symposium, several active researchers in the ‘Coral Triangle’ area and others will be invited to have introduction of highlights of their recent researches on coastal ecosystem conservation with comments on the needs for international networking. Then ways to realize and promote various international and transdisciplinary collaborations as the important challenges of JCRS toward the next decade will be discussed.

 

Program:

MC: Dr. Beatriz Casareto

 09:00-9:30 Registration

09:30-09:45 Welcome & opening remarks: Prof. Hidaka, President of JCRS

09:35-09:40 Brief talk on the significance of regional networking: Dr. Casareto

09:40-10:15 Dr. Suharsono

10:15-10:50 Dr. Perry Aliño

10:50-11:25 Dr. Thamasak Yeemin,

11:25-12:00 Dr. Tran Dinh Lan

12:00-13:10 Lunch

13:10-13:45 Dr. Takashi Nakamura

13:45-14:20 Dr. Yimnang Golbuu

14:20-14:55 Dr. Ranjeet Bhagooli

14:55-15:30 Dr. Kazuo Nadaoka

(Presentation including summary and future directions)

15:30-15:45 Break

15:45-16:30 Panel discussion on regional network establishment

(Panelists: 8 presenters and Dr. Hajime Kayanne, Facilitator: Dr. Beatriz Casareto)

 

Speakers:

1)     Dr. Suharsono, Research Professor at Research Center for Oceanography, Indonesian Institute of Sciences (LIPI), Indonesia

2)     Dr. Perry Aliño, Professor at Marine Science Institute, University of the Philippines Diliman, Philippines

3)     Dr. Thamasak Yeemin, Professor at Ramkhamhaeng University, Thailand

4)     Dr. Tran Dinh Lan, Director General at Institute of Marine Environment and Resources (IMER), Vietnam

5)     Dr. Takashi Nakamura, Assoc. Prof. at the University of the Ryukyus

6)     Dr. Yimnang Golbuu, Chief Executive Officer at Palau International Coral Reef Center, Palau

7)     Dr. Ranjeet Bhagooli, Associate Professor at University of Mauritius, Mauritius

8)     Dr. Kazuo Nadaoka, Professor at Tokyo Institute of Technology

【開催報告】
大会最終日の11 月26 日(日)に「危機にあるアジア・太平洋沿岸生態系の現状と課題-サンゴ礁学会の「次の10 年」に向けての国際連携構築へ」と題した公開シンポジウムを開催しました。このシンポは、副題に示しているように、サンゴ礁学会の「次の10 年」に向けての重要な発展軸の一つとしての国際連携構築を具体化・加速することを意図して企画したものです。そのため、今回は海外から、インドネシア、フィリピン、タイ、ベトナム、パラオ、モーリシャスでそれぞれご活躍されている、Dr.Suharsono、Dr. Perry Aliño、Dr. ThamasakYeemin、Dr. Tran Dinh Lan、Dr. Yimnang Golbuu、Dr. Ranjeet Bhagooli をお招きし、琉球大学の中村 崇さんを含めた計7名の方々に、本公開シンポジウムの主題である「危機にあるアジア・太平洋沿岸生態系の現状と課題」に関して、各国の状況と課題について講演して頂きました。そして私から、Coral triangle 域内の沿岸生態系保全に関わる2 件のSATREPS プロジェクトをご紹介するとともに、統合・連携型アプローチの重要性について述べさせて頂きました。最後に、8 名の講演者と東大の茅根さんをパネリストとして、静岡大のカサレトさんの司会で、アジア・太平洋地域のネットワーク形成・連携強化に関するパネルディスカッションを行いました。全てのパネリストから、地域ネットワーク形成・強化の必要性が表明されましたが、特に若手人材育成の観点からの連携の必要性や、研究面での連携のみならず、この地域が抱えるさまざまな沿岸生態系保全の課題の解決に資する提案や社会実装を目指した政策立案者等との連携の必要性についても指摘がありました。また、地域のセンター機能を有するプラットフォーム型ラボの設立といったユニークな提案もありました。
海外連携・展開の必要性は理解できていても、実際にその現場に積極的に関わっていこうとする方はまだ限られているのが現状です。今回の公開シンポジウムが一つのステップとなって、国際連携・展開が喫緊の重要課題であり、それに具体的に関わることを通じて、さまざまな新たな面白い展開や社会的ニーズが高い課題にチャレンジできる可能性がきわめて高いことを、特に中堅・若手の学会員に実感して頂けるようになることを期待しています。   

文責:灘岡 和夫(東工大 環境・社会理工学院)

【テーマ・セッション】

本大会では、専門性の高い議論や分野を越えた議論の場としての『テーマ・セッション』の企画を募集いたします。各セッションの企画提案者は2名までの招待講演者を学会員・非学会員問わずお誘いいただけます(招待講演者の参加登録料は無料)。
各テーマ・セッションの発表者は、招待講演者に加え、一般からも通常発表もしくは発表したいセッションのテーマを選択しエントリーすることになります。なお、各セッションの持ち時間は発表者の人数に合わせて調整いたします。企画者は発表者が出揃った段階で各テーマ・セッションの発表プログラムの編集を行って頂くことになりますので、その際には、ご協力をお願いいたします。 

募集期間: 8月21日(月)17:00まで、受付終了しました

【応募方法】

開催を希望される方は、下記の内容について、2017年 8月21日(月)17:00までに、メールで大会実行委員会宛(jcrs20th@gmail.com)にお申し込みください。メールの件名に「JCRSテーマセッション」と明記し、企画者氏名、所属、およびセッションのタイトルと概要(和文:300字以内/英文:150 words以内)をお伝えください。

※必須ではありませんが可能なかぎり英文も併記してください。発表者の募集の際に日英両方で表記いたします。

※ご不明な点がありましたら、大会実行委員会(jcrs20th@gmail.com)にお問い合わせください。

【セッションテーマ概要】

-英語セッション-

通常セッションと同じく、サンゴ礁にまつわる様々なトピックについて扱いますが、発表および、質疑応答含め、基本的に英語行います。ただし、通常セッションや他のテーマセッションにエントリーして英語で発表を行うことも可能です。

口頭発表

日時:11月25日(土)11:15-15:00

会場:ディジタル多目的ホール

ポスター発表

日時:11月24日(金)15:15-17:45

会場:メディアホール

 

-海洋生物における多様性の創出と維持-繁殖の役割を考える-

磯村尚子(沖縄工業高等専門学校生物資源工学科)

サンゴ礁を含め海域には多種多様な海洋生物が生息する。多様な生物が存在するには、様々なタイプの個体が生産され、同時にそれらが安定して存続していくことが必要となる。この多様性の創出と維持には、様々な生態的機構が関与している。中でも繁殖は、種内の遺伝的多様性や種間交雑、生殖隔離に深く関係しており、多様性の創出と維持の両方において重要な役割を担っている。本セッションでは、手法・研究分野を問わず、また、サンゴに限らず様々な分類群を対象に、繁殖と多様性について研究されている方に自身の研究を紹介いただく。その上で、異なった分野・分類群間で知見を共有し、多様性の創出と維持機構への理解を深めることを目的とする。

口頭発表

日時:11月24日(金)11:45-12:30

会場:ディジタル多目的ホール

ポスター発表

日時:11月24日(金)15:15-17:45

会場:メディアホール

【開催報告】
生物にとって「繁殖」は、多様性の創出と維持の両方に影響しており、種内の遺伝的多様性や種間交雑、生殖隔離といった現象と深く関係しています。本テーマセッションは、この「繁殖」という生態的機構がサンゴ礁を含めた海域における生物の多様性にどの様な役割を担っているか、最新の知見を交えて紹介する目的で開催しました。その中でも特に、オーガナイザーと共同研究者による研究で進展のあったミドリイシ属サンゴについての紹介となりました。
まず磯村から、セッションの趣旨説明と発表を行いました。種間交雑が起こるためには多種同調産卵が必要、というのが私たちの立てている仮説ですが、多種同調産卵する種の中にも産卵時間のわずかな違いによって物理的に交雑できない組み合わせがあり、また受精はしてもプラヌラ幼生時期にほとんどが死亡してしまう組み合わせも存在します。これらから、多種同調産卵するミドリイシのいずれもが交雑体を形成するわけではないことを示しました。
続いて北之坊さんから、多くのミドリイシ属サンゴ種では生殖隔離が成立している一方で、妊性を持つ交雑体を生成できる組み合わせが存在すること、また、ある種の卵では同種の精子が少ないときに異種の精子と受精する割合が上昇し、F1 雑種形成の可能性が高まることが紹介されました。さらに、F1雑種は自家受精や親種との戻し交配により、次世代を生産することが報告されました。
最後に守田さんから、交雑体の形成は非常に稀なイベントであり、さまざまな条件がそろった場合に生じると考えられること、交雑や雑種種分化の検証には生態学的手法、遺伝学的手法など複数のアプローチが重要であることが述べられました。
質疑応答では、生物学的な疑問やコメントだけではなく、現在の気候変動が交雑体形成に影響するか?といった幅広い質問・意見を頂くことができました。今後はミドリイシ属サンゴに限らず、他の生物にも範囲を広げてこうしたセッションを開催できればと考えております。興味のあるかたはぜひ、声をおかけ下さい。(文責:磯村 尚子)

 

-サンゴ礁生態系レジリエンス回復の切り札とは?-
赤土対策の歴史・現状を知り大規模白化時代の陸域対策の意義とあり方を考える-

金城孝一(沖縄県衛生環境研究所)
灘岡和夫(東京工業大学環境・社会理工学院)
鹿熊信一郎(沖縄県海洋深層水研究所)
中野義勝(琉球大学熱帯生物圏研究センター)

沖縄の赤土問題が社会的に注目を浴びるようになって久しく、最近ではその解決・改善に向けた様々な努力が行政や民間団体等で行われるようになっている。その背景には、赤土問題に取り組むこと自体が困難な時代に、様々な課題に挑んで道を切り開いてきた先駆者たちの存在があることを忘れてはならない。昨年の大規模サンゴ白化は、サンゴ礁生態系のレジリエンス回復・強化の重要性を改めて示しているが、そのためには栄養塩負荷対策も含めたより本格的・包括的な陸域対策が必要となる。本テーマセッションでは、このような問題認識のもとに、赤土対策の歴史的背景を振り返り、陸域対策の現状の到達点を俯瞰し、今後の取組み方について議論を行う。

口頭発表

日時:11月25日(土)9:00-11:00

会場:ディジタル多目的ホール

ポスター発表

日時:11月24日(金)15:15-17:45

会場:メディアホール

【開催報告】
沖縄の赤土問題が社会的に注目を浴びるようになって久しくなりました。最近では赤土問題の解決・改善に向けた様々な努力が、民間団体や行政等で行われるようになっていますが、未だ赤土問題の解決には至っていません。本テーマセッションでは、赤土対策の歴史的背景を振り返りながら、陸域対策の現状の到達点を俯瞰し、今後の取組み方について議論を行いました。テーマセッションの中では口頭6 件およびポスター1 件の発表がありました。
赤土問題の歴史的背景について、長年、赤土汚染の調査研究に携わってきた元沖縄県衛生環境研究所赤土研究室長の大見謝 辰男氏をお招きし、苦労話も交えながら講演頂きました。講演中の水産業界との「共闘」という強い表現からも、当時、赤土問題に取り組むことがいかに困難であったかを物語っていました。赤土問題が多くの人に認知され、行政課題の一つとなり、調査研究も行いやすい環境となった現在ですが、様々な課題に挑んで道を切り開いてきた先駆者たちの苦労や成果を忘れてはならないと改めて感じました。 赤土問題の解決には農地からの赤土流出を抑制することが喫緊の課題です。石垣島で農地対策を実践している干川 明氏をお招きし講演頂きました。サトウキビ栽培での赤土流出対策としての「株出し栽培」の有効性について発表がありました。
2016 年の大規模サンゴ白化は、サンゴ礁生態系のレジリエンス回復・強化の重要性を改めて示していますが、そのためには本格的・包括的な陸域対策が必要です。しかし①合理的な削減数値目標設定のための方法論開発、②「質」的観点(細粒分)も含めた対策の必要性、③栄養塩対策の必要性を示す事例と科学的知見の積み重ね、④順応的管理のための包括的・持続的モニタリング体制の実現、⑤包括的陸源負荷対策の持続的社会実装のあり方などの多くの課題を抱えたままです。今後も課題解決のため取り組んでいきたいと考えています。(文責:金城 孝一)

 

-沖縄県におけるオニヒトデ大量発生-

岡地 賢(有限会社コーラルクエスト)

沖縄県で1970年代以降に慢性化したオニヒトデの大量発生は、現在もなおサンゴ礁へのおもな脅威となっている。大量発生のメカニズムとして、グレートバリアリーフでは浮遊幼生期の餌となる植物プランクトンの増加が要因だとする「幼生生き残り説」が有力だが、沖縄県の大量発生も同様に説明できるのであろうか?本セッションでは、最近数年間に行われたオニヒトデ研究による、沖縄県での大量発生に関する新たな理解について議論します。

口頭発表

日時:11月24日(金)14:00-15:00

会場:ディジタル多目的ホール

ポスター発表

日時:11月24日(金)15:15-17:45

会場:メディアホール

【開催報告】
オニヒトデはインド太平洋におけるサンゴ礁の脅威として常に上位に掲げられています。とりわけ沖縄とグレートバリアリーフ(GBR)では、過去数十年間にオニヒトデの大量発生が繰り返し起きたためにサンゴ群集の回復が長年にわたって妨げられてきました。GBR での研究で大量発生に人為的な要因(水質変化)が関わっていることが示唆されたことから、わが国でも沖縄県によるオニヒトデ総合対策事業など大量発生への抜本策を講じるための調査研究が行われています。今大会のセッションでは大量発生要因に関する6 件の発表(口頭とポスター各3 件)がありました。熊谷氏(国環研)の幼生分散シミュレーションの結果、沖縄県内の各海域で産まれた幼生が元の海域に戻るself-seedingの割合が高いことがわかり、大量発生を引き起こす幼生の供給源が県内の個体群である可能性が示されました。田所氏・樋口氏・城氏(創価大)の研究によれば、植物プランクトン由来のデトライタスは栄養として同化されているものの幼生の成長に影響するほどの量ではないことや、浮遊期前半に数日~ 1 週間程度なら餌がなくても成長がさほど影響をうけないことがわかりました。また、繁殖期に精子の活動を観察した東村氏(宮崎大)のデータは、海中に放出された精子が比較的短時間で活性を失うという、これまでの推測を覆すものでした。いずれもオニヒトデの大量発生メカニズムを理解するうえでは重要な知見で、今後の発展が期待されます。(文責:岡地 賢)

自由集会

自由集会①

トカラ列島の現生および化石サンゴ礁生物が囁く火山とサンゴ礁の魅力

オーガナイザー:田中 健太郎 (東京大・AORI)・本郷 宙軌(琉球大・理)・藤井 琢磨(鹿児島大・理)・岨 康輝(JSPS PD)

日時:11月23日(木)18:00-20:00

会場:講義室 W934

トカラ列島のサンゴ礁は火山活動や黒潮の影響を受けるとともに, サンゴ礁地形の北限に近いことから独特の環境で発達している。 しかし、 アクセスの困難さからサンゴ礁生態系に関する研究は十分に行われてこなかった。本集会ではトカラ列島サンゴ礁の研究状況を参加者と共有して研究の方向性を探る。

【開催報告】
トカラ列島は屋久島と奄美大島の間に浮かぶ12個の小さな島から構成されています。そのうち5 島は無人島で、ほかの7 島の人口を併せても800 人に満たないのどかな島々です。地学的な観点から見ると、トカラ列島は沖縄トラフ北部の火山フロントに位置し、多くの島で現在もなお活発な火山活動が続いています。これらの島では火山体の山頂や山腹における噴気だけでなく、沿岸域でも火山ガスや温泉水の湧出が見られ、火山由来の成分が沿岸の生態系へとダイナミックに供給されています。また、一部の島では完新世に離水したサンゴ礁が化石としてそのまま露頭し、数千年前に繁栄したサンゴ礁の情報を保持しています。さらに、トカラ列島は亜熱帯から温帯へと変わりゆく接続海域であり、生態学的・分類学的な観点からも重要な意味を持つ地域です。このように「火山活動」・「離水サンゴ」・「接続海域」をキーワードとした独特で豊かな自然がトカラ列島には広がっています。
しかしアクセスが困難なため、研究者が足を運びトカラ列島の自然のささやきに耳を傾ける機会は少ないといえます。今回の自由集会では、トカラ列島で現地調査を行ってきた研究者の方々に現地の様子や学術調査の結果などを発表していただき、参加者のみなさんとトカラの火山やサンゴ礁の魅力を共有することを目的としました。当日は10 名程度の参加者を前にトカラ列島の自然について5 件の発表が行われました。様々な経歴を持つ研究者がトカラ列島の火山史・造礁サンゴの分布・サンゴ礁生態系の多様性・過去のサンゴ礁被度などについて発表を行い、分野を横断したインタラクティブな集会になったのではないかと思います。今後もトカラ列島の研究を地道に継続することで、遠隔地における基礎調査の重要性を再認識する一助となればと考えています。(文責:田中 健太郎)

 自由集会②

国際サンゴ礁年に向けた若手の決起集会

オーガナイザー:大野 良和(沖縄科学技術大学院大学)

日時:11月23日(木)18:00-20:00

会場:講義室  W935

国際サンゴ礁年がいよいよ来年から始まりますので、若手のメンバーを対象とした勉強会を企画しました。また、これまで日本各地で実施されたアウトリーチ活動も紹介し、情報共有の場にできればと考えています。

【開催報告】
国際サンゴ礁年2018 年がいよいよ始まります。サンゴ礁学の教育普及活動について、興味のある会員の方々は多数いらっしゃると思いますが、まずはそのきっかけになればと思い、今回の勉強会を企画させていただきました。
自由集会では、始めに安田 仁奈さん(宮崎大学)から国際サンゴ礁年についてお話しいただいた後、2008 年の国際サンゴ礁年でご活躍された土川 仁さん(コーラルネットワーク)にご講演いただきいただきました。その後、沖縄県内で環境教育に従事されている仲栄真 礁さん(一般社団法人キュリオス沖縄)から、アウトリーチ活動の工夫や難しさについて詳しく説明をしていただき、大変勉強になりました。
また、最近では、宮崎県のイオンモールにて、サンゴ礁についての大規模な展示が行われたとのことで、東村 幸浩さん(宮崎大学)には、その活動内容についてのお話をお願いしました。オニヒトデ幼生の標本を用いて工夫を凝らした展示をされた他、イベント後にも紙粘土でオニヒトデ模型を試行錯誤して作ったというお話しには感心をさせられました。そして、沖縄科学技術大学院大学(OIST)では、毎年サイエンスフェスタや県内の小学生向けに磯歩き等などのアウトリーチ活動が活発に行われていると、座安 佑奈さんにご紹介いただきました。水山 克さん(琉球大学)は、沖縄県内で開催されるサンゴ礁ウィークに毎年、尽力されているため、アウトリーチ活動の意義について熱く語っていただきました。私からは、昨年度から参加している、自然史連合学会主催の体験講座での活動報告をさせていただきました。
当日は、約30 名の方に参加いただき、本企画が参加者同士でアウトリーチ活動の準備や実際のイベントでの発表の仕方の工夫等、活発な意見交換の場となったことはとても嬉しく思います。今後、アウトリーチ活動を全国展開するには、コンテンツの共有化やネットワークづくりが課題になると考えています。一人でも多くの方に、今後のサンゴ礁学の普及活動に参加してもらえれば幸いに思います。(文責:大野 良和)

 自由集会③

海における研究のためのフィールドワークの現状と課題

オーガナイザー:中井 達郎(国士舘大)・鈴木 倫太郎(WWF)・主催:調査安全委員会

日時:11月23日(木)18:00-20:00

会場:講義室  W936

サンゴ礁の研究では、海での調査は必要不可欠な活動である。本集会では、この活動における最近の事故事例や問題について情報を共有し、その解決に向けた意見交換を行う事を目的とする。

【開催報告】
調査安全委員会は、自由集会「海における研究のためのフィールドワークの現状と課題」を開催いたしました。参加者は大学教員、コンサルタント、研究機関など様々な立場から、計14 名のご参加をいただきました。
集会では、まず、最近発生した海域調査での潜水事故事例、大学の教育活動における事故事例、事故後の対応や対策の検討について、その経過と状況を報告していただきました。その後、参加者が所属する各大学や研究機関が実践している調査活動に関する安全対策について、海域での調査を伴う研究・教育活動における現状と問題点を報告していただき、参加者同士の意見交換を行いました。意見交換では、海域での調査活動について安全対策は、共通する指針や基準について明確なものが現状では無く、大学や研究機関によって対策に差があること、また大学では教員個人が学生の安全管理を行い責任も負う立場であることなど、様々な問題点が話し合われました。
普段、それぞれの立場で研究調査や教育活動を行っている状況では、他機関の対策状況や方法を知る機会が無いため、今回の集会ではこれらの情報を共有することができる機会となりました。今後は、調査安全委員会において、調査安全に関する情報の収集や発信、参考となる事例の紹介などを集会や学会HP を通じて行う予定です。(文責:鈴木 倫太郎)

自由集会④

地質・化石が囁くサンゴ礁地形・生態系変遷史 2017

オーガナイザー:岨 康輝(JSPS PD)・本郷 宙軌(琉球大・理)

日時:11月24日(金)18:00-20:00

会場:講義室  W934

地質・化石を利用したサンゴ礁地形・生態系の変遷史復元は、本来のサンゴ礁生態系を評価できる研究アプローチである。本集会では国内外における最新の研究状況を参加者と共有して研究の方向性を探る。

【開催報告】
サンゴ礁の地質・化石は何故重要なのでしょうか?サンゴ礁の数多ある謎に、どのような最新研究アプローチから迫ることができるのでしょうか?これらの疑問を多くの方々と共有して研究を進めていくために本自由集会を企画しました。本自由集会はサンゴ礁学会を美しく彩った紅葉が宵闇で染まった時間帯から開催したにも関わらず、幸いなことに19 名もの方に集まっていただき熱い議論が交わされました。議論は自由集会後の懇親会でも引き続き行われました。本自由集会は昨年度に引き続き、学会員だけでなく、非会員の研究者の方々にもサンゴや有孔虫,石筍などを構成する炭酸塩鉱物を用いた最新の化学・物理的な研究手法の紹介、それらを用いた陸・海域の古環境復元に関する講演をしていただきました。今後も引き続き、サンゴ礁学会で地質・化石を用いた研究の重要性を広めるための機会を設けていきたいです。以下に講演者と発表タイトルを記して筆を置かせていただきます。
岩崎晋也 (JAMSTEC): マイクロX 線CT スキャナによる炭酸塩生物骨格の物理測定と古海洋指標への応用, 吉村寿紘(JAMSTEC): 炭酸塩のSr・Mg・Ca 安定同位体比に記録された環境と石灰化の記録, Marc Humblet ( 名古屋大学):A remarkablefossil Heliopora coerulea community from the Pleistocene Minatogawa Formation, southern Okinawa-jima, Japan, 狩野 彰宏( 東京大学): 日本の石筍記録から読める過去8 万年間の変動, 本郷 宙軌 ( 琉球大学): 化石サンゴ礫を用いた過去の台風・津波履歴復元, 岨 康輝 (JAMSTEC):温帯サンゴ骨格のホウ素同位体・組成を用いた石灰化部位のpH・全炭酸復元.  (文責:岨 康輝)

自由集会⑤

蛍光撮影技術を生かした海洋生物イメージングとモニタリング-V

オーガナイザー:古島 靖夫(海洋研究開発機構)・Sylvain Agostini(筑波大学下田臨海実験センター)・山下 洋(水産研究・教育機構 西海区水産研究所)・丸山 正(北里大学)・鈴木 貞男(O.R.E.)

日時:11月24日(金)18:00-20:00

会場:講義室  W935

昨年と同様に,サンゴ(海洋生物)蛍光の現場撮影技術と,海洋生物研究の融合は可能であるか?不足技術・調査は何か?等について,分野横断型の議論が気軽に出来る場を設けると共に,多波長励起式蛍光撮影装置による撮影結果等を踏まえて,その将来性を探ることを目的としたい。

【開催報告】
海洋生物・生態学研究の視点から蛍光撮影技術を如何に利用できるか、について分野横断型の議論を気楽に行える場としてスタートした本自由集会は5回目を迎えました。今年は、主に次の3つの話題を中心に議論の場を持ちました。
(1)開発した多波長励起式蛍光カメラを利用した現場観察実験…(メリット・デメリット)
(2)多波長励起式蛍光カメラがサンゴ白化モニタリングに応用が可能か?
(3)最近の機器開発(主にカメラ、小型ROV)の動向…
また、自由集会の最後には、多波長励起式蛍光カメラのデモンストレーションも行いました。
多波長励起式蛍光カメラを利用した現場観察実験から、海中での装置の取回し(例えば、カットフィルターの交換がやり難い等)や、外光の侵入に問題のあることが示されました。また、装置に搭載されている長波長の赤色域の蛍光を見ることは難しいことが分かりました。サンゴと藻類あるいは藻類の種類によって異なる色素を認識して区別するためには、クロロフィル蛍光だけでなくフィコビリン系の蛍光が分かるフィルターセットが作成されると、それらの藻類の多様性を把握できる可能性があることが議論されました。
本装置のサンゴ白化モニタリングへの応用ついては、サンゴの蛍光と褐虫藻の蛍光を分けられるフィルターセットが必要であり、そのためには、サンゴが持っている蛍光物質の特性を理解する必要があることが議論されました。また、蛍光写真の標準化の手法は必ず必要であることが示されました。さらに、サンゴ内の褐虫藻細胞数と蛍光画像から得られるクロロフィル蛍光量の関係式をえることが出来れば、蛍光写真から褐虫藻の数を推測できる可能性のあることが併せて議論されました。 最近の機器開発の動向では、LED をベースにした小型水中ライト、小型で安価の高解像度カメラ、以前に比べると安価になった小型ROV(組み立て式)等の機器紹介がありました。小型カメラは、多波長励起式カメラ、小型ROV は潜水作業が難しい深度のサンゴ調査に応用が可能であることなど、技術に関する理解も深めました。
今回の自由集会で見いだされた技術的な問題点は、改良する方向で議論を進めました。蛍光撮影技術には、まだまだ多くの問題点があります。だからこそ、蛍光撮影技術を生かした海洋生物研究を拡充するためには、引き続き分野横断型の議論を行うことが大切であると我々は信じています。(文責:古島 靖夫)

サンゴ礁保全活動 & 小・中・高校生によるサンゴ礁研究ポスター発表

日時:11月25日(土)9:00-15:00

会場:メディアホール

 学会の社会連携を推進するため、サンゴ礁の保全活動を行うNPO等(非営利団体、任意団体や個人も歓迎)のポスターコーナーおよび、小・中・高校生によるサンゴ礁に関する学習・研究成果を発表するためのポスターコーナーを設置します。

 
 
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