サンゴ礁
 

第21回大会2018

第21回大会報告

※ニュースレター80号では写真付きで報告がご覧になれます。 ⇒ NLはこちら

 去る11月22日(木)から25日(日)まで、琉球大学理系複合棟を主会場として、第21回大会が開催されました。今年は、6 月にアジア太平洋サンゴ礁学会がフィリピンのセブ島で開催されたばかりでもあり、参加者が集まるかやや不安でしたが、結果的には多数の参加者(243名、うち沖縄県外からの参加者137 名、海外からの参加者14名)を迎えることができました。また、本大会からは、これまでの大会とは異なり実行委員会が主催する形式の大会ではなくなり、法人化した学会の理事会が主体となって大会を主催する仕組みとなり、実行委員会では主に会場確保と準備・実行に関する様々な手配と当日の運営等を引き受けさせていただきました。その中で、沖縄観光コンベンションビューローの支援申請をおこない、コングレスバック、ペンや、懇親会開催の支援を受けることができました。また、本大会では「西原ファミリーサポートきらきら」さまのご協力により、開場から夜8 時までの託児サービスを会場で提供することで、乳児から小学生までを連れた研究者が大会に参加する事ができました。
 発表初日の23 日には、二会場での開催となった口頭発表、多数のポスター発表に加え、夕刻から5 件の自由集会が並行開催されました。24 日には各種学会賞の授与式が行われたのに続いて、テーマセッション①が開催され、琉球大学ORCHIDS プロジェクトに関連した研究や産学連携の取組などが紹介されました。夕刻開催の懇親会では、沖縄ならではの大東寿司をはじめとしたメニューや、泡盛試飲ブースも設置され、ミス泡盛によるあいさつや、沖縄芸能研究会による琉舞と三線演奏が披露され、和やかな雰囲気の中、優秀発表賞・ポスター賞の受賞者に日高会長からの賞状授与式がおこなわれました。さらに、次回大会の開催場所として北海道がアナウンスされ、渡邊剛実行委員長のあいさつが行われ、北国開催に参加者も大いに盛り上がりました。懇親会最後には、100 名近い参加者の皆様に、沖縄在住者でも入手が難しいとされる、幻の「ちんすこう」が一袋ずつお土産として配られました。
 翌25 日には、テーマセッション②が開催され、研究者と地域との連携を模索する各地での様々な取組が紹介され、活発な質疑と議論が交わされました。さらに、大会最後の締めくくりとなる小中高生ポスター、保全活動ポスター発表が続き、予定終了時刻を30 分過ぎても会場には多くの議論や質問の声が響き、熱気冷めやらない中、撤収のお願いを呼びかける状況となりました。本大会では最終的に、一般口頭43件、英語セッション口頭6 件、テーマセッション口頭8 件、一般ポスター58 件、英語セッションポスター3 件に加え、小中高ポスター9 件、保全ポスター9 件の延べ136 件の発表が行われました。
 諸々の不手際もありましたが、大過なく大会を開催することができました。この場を借りて、ご参加頂いた皆様、実行委員の皆様、学会事務局のご協力・ご尽力に深く御礼を申し上げます。

文責:中村 崇(琉球大学)

日本サンゴ礁学会 第21回大会実行委員長よりごあいさつ(終了しました)

日本サンゴ礁学会第21回大会を、下記の日程にて沖縄で開催します。今年の大会では、学際的議論や高度な専門分野間での活発な議論を歓迎いたします。また、サンゴ礁にまつわる研究をすすめている若手研究者からの企画提案によるテーマセッション・自由集会の提案・運営をお待ち申し上げております。本大会のテーマセッションでは、セッションの概要を、学会誌を介して広めるために、セッション提案者を中心とした解説論文を学会誌へ投稿することを提案の条件としております。口頭発表は二会場制とし、英語口頭セッションも設けます。また可能な限り多くのポスター発表を受け付ける予定です。皆様のご参加を心よりお待ちしております。.

第21回大会実行委員長 中村 崇 
          大会実行委員:伊藤 通浩、磯村 尚子、栗原 晴子、佐藤 崇範、千徳 明日香、
土岐 知弘、中村 崇、波利井 佐紀、藤田 和彦、藤村 弘行、
本郷 宙軌、水山 克、守田 昌哉、山城 秀之、ライマー JD

日程:2018年11月22日(木)~11月25日(日)

主会場:琉球大学理学部理系複合棟(1階ホール・102教室・202教室など)

Google map: 「〒903-0213沖縄県中頭郡西原町千原1番地 琉球大学 理系複合棟」

琉球大学への那覇からのアクセス: (http://www.u-ryukyu.ac.jp/univ_info/general/access/index.html

map

交通案内:那覇市内より

● 琉大北口方面行き 高速バス111番、113番、117番、123番、152番および「やんばる急行バス」の「琉大入口」で下車 バス停より徒歩約15分

● 北口方面行き 路線バス97番、98番線「琉大北口」下車 バス停より徒歩約15分

● 東口方面行き 路線バス97番線「琉大東口」下車 バス停より徒歩約10分

● モノレール「首里駅」下車、タクシー(約20分 約1,500円)

 

大会受付

● 大会受付は琉球大学理系複合棟1Fのエントランスホール内です。口頭発表およびポスター発表会場は1階および2階フロアです。

● 初日および最終日にはクローク(理複209室)を用意しておりますのでご利用ください。

 

第21回大会スケジュール

8月14日(火)17:00
   テーマセッション企画応募締切

8月27日(月)10:00から
   事前支払・参加登録、研究発表申込開始、
   自由集会の申込開始、
   サンゴ礁保全活動ポスターコーナー申込開始、
   小・中・高校生によるサンゴ礁研究ポスターコーナー申込開始

9月21日(金)17:00まで
   事前支払・参加登録、研究発表申込の締切、サンゴ礁保全活動ポスターコーナー申込開始、
   小・中・高校生によるサンゴ礁研究ポスターコーナー申込開始
(これ以降は割引の効かない当日払いとなります。事前払いするには事前参加登録が必須です。)

10月5日(金)17:00まで
   要旨締切(Webによる受付)
   自由集会の申込締切、

 

大会スケジュール/案内

11月22日(木)

13:30-16:30 公開シンポジウム(那覇市久米2-15-23沖縄県青年会館)
“アジア太平洋のサンゴ礁・沿岸環境保全・管理における日本の役割”

17:00- 代議員総会・理事会(那覇市久米2-15-23沖縄県青年会館)

 

11月23日(金)大会1日目(琉球大学千原キャンパス)

08:30- 受付開始(理系複合棟1階ホール)

09:00-12:00  口頭発表 ①(理系複合棟102教室)
        口頭発表 ②(理系複合棟202教室)

13:30-14:00 川口奨励賞授賞式、授賞講演 (理系複合棟102教室) 

14:15-16:00  口頭発表 ③(理系複合棟102教室)
        口頭発表 ④(理系複合棟202教室)

16:15-17:45 ポスター発表 A(理系複合棟1階ホール)

18:00-20:00 自由集会 ②(理系複合棟202教室)
       自由集会 ③(理系複合棟207教室)
       自由集会 ④(理系複合棟609教室)

11月24日(土)大会2日目(琉球大学千原キャンパス)

08:30-受付開始(理系複合棟1階)

09:00-10:00  口頭発表 ⑤(理系複合棟102教室)
        口頭発表⑥(理系複合棟202教室)

10:15-11:30  口頭発表 ⑦(理系複合棟102教室)
        口頭発表⑧(理系複合棟202教室)

11:45-12:30  テーマセッション ①(理系複合棟102教室)
       テーマセッション ④(理系複合棟202教室)

15:15-17:45  ポスター発表 B(理系複合棟1階ホール)

18:00-20:00  懇親会(琉球大学中央生協食堂)

 

11月25日(日)大会3日目(琉球大学千原キャンパス)

08:30- 受付開始(理系複合棟1階ホール)

09:00-10:00  テーマセッション ⑤(理系複合棟102教室)

11:00-12:00  テーマセッション ⑥(理系複合棟102教室)

09:00-12:00 English session(理系複合棟202教室)

10:00-11:00 小・中・高校生によるサンゴ礁研究ポスター発表&サンゴ礁保全活動ポスター発表(理系複合棟1階ホール)

※なお、口頭およびポスタ-発表の数によって、上記のプログラムを多少変更する可能性があります。

プログラム

第21回大会の口頭・ポスター発表プログラムは、
NL79号からご覧いただけます。

 

【一般公開シンポジウム】報告

「アジア太平洋のサンゴ礁・沿岸環境保全・管理における日本の役割」

日時:2018年11月22日(木曜日)13:30-16:30 (参加無料)

会場:沖縄県青年会館

内容:日本サンゴ礁学会第21回大会にあわせ、11月22日(木)、沖縄県青年会館において標記シンポジウムを開催し、学会員が現地機関と連携して行った、アジア太平洋地域のサンゴ礁と沿岸の環境保全・管理の成果を報告しました。本シンポジウムは、外務省、環境省、沖縄県の後援を受け、学会員だけでなく一般からもあわせて70名ほどの来場者がありました。
栗原晴子(琉球大学)は、パラオ国際サンゴ礁センターと共同で、それまでセンターが行っていたサンゴ群集調査に加えて、栄養塩や炭酸系など水質分析の測定システムを導入し人材育成を行ったことを報告しました。鹿熊信一郎(沖縄県深層水研究所)は、フィジーの村落規模での、レジデント型研究者が主導する海洋保護区の管理について紹介し、沖縄の海洋保護区や保護水面と比較しました。山野博哉(国立環境研)は、ツバルなど環礁島嶼国の海岸保全を、サンゴや有孔虫など生態系を活用した減災という視点から行う国土政策提言を行ったことを報告しました。灘岡和夫(東京工業大)は、フィリピンにおいて人為負荷によって劣化したサンゴ礁生態系修復をフィリピン大学と共同で行った事例を紹介し、今後マングローブや海草藻場等も含めCO2固定という視点から保全とリンクした沿岸管理への展望を述べました。最後に、環境省石垣自然保護官事務所の藤田和也上席自然保護官より、国内の石西礁湖自然再生協議会の取り組みと、国際的には国際サンゴ礁イニシャチブで東アジアのサンゴ礁の現状をとりまとめていると紹介がありました。また、沖縄県環境部自然保護課の津波昭史氏からは、沖縄県で行っているオニヒトデ対策事業などの成果が、日本サンゴ礁学会の大会や学会誌で発表され、他の地域や国のサンゴ礁保全に役立つことへの期待が寄せられました。
我が国のサンゴ礁研究は、モニタリング技術、人材育成、制度設計など、アジア太平洋のサンゴ礁保全・管理を主導する役割がある一方で、海外における共同研究が我が国のサンゴ礁保全にもフィードバックできることを、あらためて確認することができたシンポジウムでした。(文責:日本サンゴ礁学会 理事会)

【セッションテーマ概要】

タイトル①:琉球大学高度統合型熱帯科学技術イノベーション(Okinawa Research Core for Highly InnovativeDiscipline Science(ORCHIDS))プロジェクトにおける海洋科学研究の取組み 

オーガナイザー:JD. Reimer、新城竜一、中村衛、田中厚子、中村崇(琉球大学)

【開催報告】
「ORCHIDS」プロジェクトでは、琉球大学の強みである海洋科学の実績を活かし、東南アジア・太平洋諸国との国際的な連携を展開することによって、琉球大学の海洋科学研究に関する国際的な拠点化構想を推進しており、「サンゴ礁生物、海底熱水鉱床、海洋生物増養殖、および海洋域自然災害」の4分野を軸とした研究を進めています(http://orchids.skr.u-ryukyu.ac.jp/)。また、研究だけでなく、得られた成果を基に、海洋科学のオープンイノベーションシステム体制の構築や、沖縄の海洋科学研究機関をクラスター化した協動体「沖縄海洋科学技術コンソーシアム」を設立しつつあり、次世代の人材育成を担う組織づくりと、企業・大学・公的研究機関との「共創・協動」の仕組みを構築することで、産学官連携によるイノベーション創出を目標としています。本セッションでは、それぞれの分野から、最新の研究や産学連携の紹介が行われました。まず初めの「Microenvironmental variation and importance for Symbiodiniaceae」では、新たに科として分類された褐虫藻類について、高精度分子マーカーを用いた解析により、同一宿主内でも、光条件などの微環境の差異により、体内の種・属の構成が影響を受けている可能性が紹介されました。続いて、「ホウ素同位体比:海洋pH 復元と海底熱水鉱床への応用」では、観測データがない過去の海洋のpH 変動をサンゴ骨格年輪の同位体比の解析から知ることができ、特に北太平洋赤道域での酸性化の傾向が示されました。さらに、海底下の熱水循環のトレーサーとして堆積物中の間隙水の同位体分析が有効であることが紹介されました。「海洋域の自然災害科学に関する研究基盤拠点形成」では、台風の進路や強度を正確に予測する為の様々な取り組みについての紹介がありました。さらに南西諸島の海溝側の海底のひずみを観測した結果から、琉球海溝での大規模地震とそれに伴う津波の可能性が浮き彫りとなり、沖縄県における防災指針が改善されたことなどが紹介されました。「オキナワモズク養殖技術向上を目指した産学連携の取り組み」では、沖縄県の養殖生産の要であるモズクの養殖にかかわる様々な課題解決のため、新たな連携体制の下で進められている、最新の研究成果が紹介されました。優良品種開発に向けた取組とともに、より効率的な養殖に向けた環境調査などについても紹介されました。
*詳しくは2019年度発行予定の日本サンゴ礁学会誌に解説論文として掲載予定です。

文責:中村崇 (琉球大学理学部)

タイトル②:「地域社会とサンゴ・サンゴ礁をつなぐ研究者の役割:その可能性と課題」に参加して 

オーガナイザー:佐藤崇範(琉球大学)

【開催報告】
このテーマセッションは、今回の大会で私が最も楽しみにしていたものです。それは、今後のサンゴ礁保全ではトランスディシプリナリー(TD)研究がどうしても必要であり、セッションがTD 研究の可能性と課題を提示してくれるだろうと期待していたからです。結果は期待どおりでした。インターディシプリナリー研究(学際研究)が自然科学、人文・社会科学を統合した研究であるのに対し、TD 研究は「地域の問題解決のため、科学者と地域の人びとが、研究のデザイン、知識・技術の生産、研究成果の実践のすべてで協働する研究」
です。
 セッションでは、中井達郎「サンゴ礁保全をめぐって地域住民・地域社会と共有すべきことは?」、谷口洋基「国立公園としてのサンゴ礁保全と観光の現状とこれから」、渡邊剛「喜界島サンゴ礁科学研究所-フィールドに根ざしたサンゴ礁研究拠点形成と次世代リーダーの育成」、中地シュウ「地域の人と自然をつなぐフィールドサイエンスへの興味と挑戦」という4つの講演があり、どれもたいへん興味深い内容でした。
 谷口氏や中地氏は、「地域に定住する研究者で、地域社会の一員として地域の課題解決に役立つ領域融合的研究を実践する」レジデント型研究者として、地域のサンゴ礁保全に貢献していることが理解できました。サンゴ礁に限らず、地域の環境問題に取り組むレジデント型研究者は全国に存在し、地域環境学ネットワークでつながっています(2016年時点で139名)。ネットワークの成果の一つに「地域と科学者の協働のガイドライン」(http://lsnes.org/guideline/)があります。このガイドラインは、レジデント型研究者や訪問型研究者が、地域のステークホルダーと協働してTD研究を行う際のヒント集になっています。
 中井氏が指摘したように、地域社会と協働する研究者の役割の一つに「地域の価値の発見・再発見を手伝い、外部に発信する」ことがあります。レジデント型研究者の場合は、このようなポジティブな役割以外に、地域内で対立が生じた場合、この問題の解決を期待されることもあります。科学的・客観的に中立の立場をとるのは難しいことが多く、中地氏が語ったように、「どこまで首を突っ込むかは自分で決めるしかない」のでしょう。

文責:鹿熊信一郎(沖縄県海洋深層水研究所)

自由集会報告

自由集会①

タイトル:喜界島サンゴロジー

オーガナイザー:山崎敦子(九州大学大学院理学研究院 / 喜界島サンゴ礁科学研究所)

【開催報告】
本学会員の皆様にも多数ご参画いただいている喜界島サンゴ礁科学研究所の自由集会「喜界島サンゴロジー」を開催させていただきました。日本サンゴ礁学会に参加すると実感しますが、サンゴ礁は非常に研究分野の多様性の高いフィールドです。喜界島サンゴ礁科学研究所は多様な視点とバックグラウンドを持った研究者のみなさんと一緒にフィールド拠点を形成する目的で設立し、今回、その情報交換や共同研究を活発化するため、私たちの研究分野をサンゴロジー(Coralogy)と表現して、自由集会を企画致しました。
本集会では5人の方にご講演をいただき、今後の喜界島での研究の方向性や研究所の活用、共同研究の提案や教育活動のアイデアをいただきました。北海道大学のKevin Garas さんは喜界島と母国フィリピンのモンスーン気候の変動を研究されており、喜界島の化石サンゴから復元される完新世のモンスーンの変動について研究成果を発表していただきました。磯村尚子会員には「産卵と高専と喜界島」という素敵なタイトルで、喜界島での研究計画と沖縄高専の磯村ゼミのみなさんの来島計画についてお話をいただきました。最近は研究所をゼミや講義などで利用される大学も増えており、今後も企業や大学の皆様に研修でご利用いただければと思っております。樋口富彦会員にはサンゴの環境ストレスと白化についてお話いただき、喜界島での陸水や栄養塩観測のご提案をいただきました。北野裕子会員には、国立環境研究所が奄美群島で推進される研究計画についてご紹介をいただきました。中村修子会員には喜界島の小・中・高校も参加している海洋教育パイオニアスクールの取り組みをご紹介いただき、学校教育の現場におけるサンゴ礁の学習についてお話をいただきました。その後の懇親会もアットホームな雰囲気の中で大いに盛り上がりました。
ユニークなサンゴ礁段丘と現生サンゴ礁生態系を有する喜界島を舞台に、研究・教育・普及を推進し、サンゴ礁科学を発展させるための今後をみなさんとお話することができました。ありがとうございました!
(文責:山崎敦子)

自由集会②

サンゴ礁保全学術委員会

オーガナイザー:山野博哉(国立環境研究所・サンゴ礁保全学術委員長)

【開催報告】
自由集会の枠を使わせていただいて、30名程度の方々にご参加いただき、活動に関する議論を行いました。今後も、こうした機会を活用して議論を進め活動を具体化させていきたいと考えています。
1. 運営体制
これまでの体制を継承し、学会員に限らず広く参加していただいて議論を行うとともに、コアメンバーによる意志決定を行うこととしました。
2. サンゴ礁保全活動奨励賞
今年度の受賞者の報告と、審査に関する申し合わせとして、「保全学術委員長が審査委員長を指名する。授賞は基本的に賛成票が過半数を超えることとする。賛成票が半数に近い場合は、集計結果から委員長が判断し、その内容を委員に再度諮って決める場合がある。」ことを定めました。
3. サンゴ礁保全に関するアンケート
サンゴ礁保全に関して、学会員が関わっている活動に関するアンケートを行い、33名から回答をいただき、うち32名が問い合わせ可能との回答をいただきました。今後こうした情報の公開を進めることとしました。
4. 地域からの要請への対応
建設予定のホテルの排水対策に関する懸念が委員会に寄せられ、委員会としては、個別案件の参考となるガイドライン作成を検討することとなりました。
5. サンゴ和名ワーキンググループ
最新の和名の状況をとりまとめ公開するワーキンググループを本委員会内に立ち上げることが提案され、活動を具体化させていくこととなりました。
6. 国際情報
愛知目標10(サンゴ礁など気候変動に対して脆弱な生態系へのストレスを低減する)の中間評価が悪く、それに対して各主体の行動の情報のインプットを生物多様性条約事務局から求められており、サンゴ礁学会の対応をインプットすることになりました。

自由集会③

潜水調査における危険回避と安全管理

オーガナイザー:鈴木倫太郎・中井達郎 (調査安全委員会)・主催:調査安全委員会

【開催報告】
表題の内容で、丸山敦氏に講演をしていただきました。丸山氏は、石垣島のDive Center Seabat 代表、NAUI インストラクタートレーナーであり、また八重山ダイビング協会の副会長、安全対策委員長として活躍されています。これまでに数々の事故事例や現場でのリスクを経験され、安全管理に日々対応されている方の目からは、調査ダイビングでも危険を感じる時があると言われます。そこで今回の講演をお願いしました。以下に講演内容の骨子とそのポイントを整理します。
○まず、潜水において潜水事故や水難事故の危険性は常に伴っていること肝に銘じておくべきです。
○潜水事故は、海面で起こることが最も多いです。その原因は、海中から浮上して空気があることで緊張が緩むことなどにあるのではないでしょうか。
○潜水事故予防で最も重要なことは、事故が起きた場合を想定したシミュレーション(イメージ・トレーニング)を行うことです。そして、潜水を行うメンバーでコミュニケーションを取り、事故に対する意識を共有することです。このことは日頃のトレーニングとして行うと同時に、潜水活動直前のミーティングでも実施されるべきです。
○潜水活動のリーダーとしては、潜水活動前の上記のようなコミュニケーションを通じて、参加者の潜水経験、安全に対する心得の状態(潜水経験に関する事前アンケートなどでは読み取れない部分)を把握することに努める必要があります。
○登山では「登山計画」を提出することになっていますが、本来は潜水活動も「潜水計画」を提出するしくみが必要です。
お話は、いわゆるマニュアル的・教科書的なものではなく、豊富な経験・具体事例に基づく実践的な内容であり、示唆に富む内容でした。参加者とのやりとりも活発におこなわれ、各人が頭の中で事故に関するシミュレーションを行いながら学んだ「安全講習」だったと感じました。丸山氏に感謝申し上げます。参加者は11名でした。

自由集会④

教材「サンゴのテリトリーウォーズ」を題材にしたサンゴ礁の教育教材研究集会

オーガナイザー:中野義勝(琉球大)

【開催報告】
環境学習教材の多くは領域の専門家のみによって開発される傾向が強く、教育現場での体系的位置付けが不十分で、折角開発されても活用されていないものも多いのが実情です。この自由集会では、サンゴとサンゴ礁の基本事項を学び、サンゴ礁⽣態系の保全、回復及び将来の被害の発⽣を回避するために、⼈為的負荷を軽減し抑制することを考えるよう設計された参加体験型の科学教育プログラム「サンゴのテリトリーウォーズ」を題材に、サンゴ礁保全意識の醸成を⽬的とする学習教材について議論しました。
集会は、
1.「サンゴのテリトリーウォーズ」の体験
2.教育学的留意点
3.サンゴ礁学習教材の特徴
4.教材開発のプロセス
5.対象年齢を変更した教材改変のとりくみ
の順に進行しました。
 伝えたいことを効果的に伝えるためには、学習者がどう学習しているかを理解したうえで学習の場を作ることが必要ですが、これは教育学の範疇にあるため、海洋科学をバックグラウンドとする人たちには触れる機会の少ない分野です。
 そこで今回は、それに合わせた教育プログラムになっていれば学習者はその学習に能動的にとりくめる、という「効果的な学びの場をつくるためのモデル」を紹介しました。また、こういった科学的概念を教える教材を開発するときに陥りがちな「情報過多」に留意することの大切さ、さらに、教材開発の目的やどのような体制で行うかの例として「サンゴのテリトリーウォーズ」をひも解きました。
 最後に、対象年齢が変わると教育プログラムの作り方も変えなくてはならないことの例として、低年齢層向けに改変した「サンゴのテリトリーウォーズkid’s」を紹介し、改変した個所とその理由を解説しました。
 その後、学習者への質問の投げかけ方や「サンゴのテリトリーウォーズ」で取り上げた科学的概念について議論を行いました。
文責:今宮則子(海の自然史研究所)・中野義勝(琉球大)

自由集会⑤

蛍光撮影イメージング・モニタリング-Ⅵ

オーガナイザー:古島靖夫(海洋研究開発機構)・鈴木貞男 (O.R.E.)・Sylvain Agostini ( 筑波大学下田臨海実験センター)・山下 洋(西海区水研)・丸山 正(北里大学)

【開催報告】
海洋生物が発する蛍光を,環境情報と併せて現場で簡単かつ安価にイメージング出来る装置があれば,生物の健康状態や生物相変化を捉えるツールになり得るのでは?と言う考えのもと,分野横断型で自由な議論が出来る場を設けようと始めた本自由集会も7回目を迎えました。今回は,ネット会議の試みとして,オーガナイザーの丸山さんにはSkype で参加頂き,下記の3つのテーマを中心に実機を見ながら活発な議論を進めました。(1)
多波長励起式蛍光撮影装置の現状と不足機能:シアン系の蛍光を持つサンゴも存在するため,グリーンに加えてシアン蛍光が撮れるフィルターセットが必要であること,またクロロフィル蛍光に特化したフィルターセットも必要ではないか等の議論がされました。(2)蛍光画像の標準化:色々な人が様々な環境で撮影した蛍光画像を比較検討する場合,画像の標準化が必要になるが,その手法については先より課題となっていました。そこで,西海区水産研究所の山下さんから,市販の蛍光基準板とフリーの画像解析ソフトを用いた,簡単な蛍光画像の標準化に関してお話を頂きました。(3)多波長励起式蛍光撮影装置の商品価値:現在開発中の多波長励起式蛍光撮影装置は,連続的な蛍光撮影(観察)が可能である点や,観察者のスキルに関係なく広域的なモニタリング(マッピング)が可能であることが提示されました。最終的に簡便かつ安価に環境影響評価に使えれば,画期的な装置になるだろうことが示唆されました。議論された技術的な側面については,開発途上にある多波長励起式蛍光撮影装置に反映させていく予定です。また,蛍光撮影技術を生かした海洋生物研究を拡充するためには,分野横断型の議論を今後も継続していくことが大切であると我々は信じています。
(文責:古島 靖夫)

サンゴ礁保全活動 & 小・中・高校生によるサンゴ礁研究ポスター発表

栗原晴子(琉球大学、日本サンゴ礁学会 教育・普及啓発委員長)

【開催報告】
2015年からサンゴ礁学会大会にて小中高生によるポスター発表の場が設けられるようになり、今年で4回目の開催となりました。今年は喜界島のサマースクールの参加者らを含め、全国から総勢9件の申し込みがありました。当日、都合により参加できなかった学生さんも居たようですが、皆様工夫を凝らしたポスターを作成されており、聞くこちらも大変刺激になりました。ポスター内容も多岐に渡っており、ソフトコーラルのポリプの開閉と光の関係を調べたポスターや高CO2と高栄養塩を示す井戸水でのサンゴの骨格成長、ドローンを使ったサンゴの卵の回収、サンゴ礁に住む様々な無脊椎動物が天敵から身を守る戦術や生物の分布を調べたものなど様々でした。個人的にはサンゴは牛乳や味噌汁でも育つのかを検証するというのは、硬くなった自分の頭には無い実に自由でユニークな発想だと感じました。
 自発的に発生したこの小中高生ポスター発表会ですが、教育・普及啓発委員会では、今後、本発表会がさらに盛り上がっていくようにバックアップをしていきたいという話になりました。このため、さらに多くの小中高生がポスター発表に参加してもらえるように広く小中高学校に呼びかけを行うこと、また来年度の大会からは「小中高生ポスター発表賞」の授与も検討しています。その他、会場に来られない学生も参加できる方法の検討や、より多くの研究者から学生達へのコメントやアドバイスなどをフィードバックできるようにしていきたいと考えていますので、皆様ぜひ、御協力よろしくお願いします。若い前途有望な研究者の卵達への温かいエールを!

 

 
 
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